研究領域 | 酸素を基軸とする生命の新たな統合的理解 |
研究課題/領域番号 |
17H05536
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
桑木 共之 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (80205260)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | TRPA1 / 三叉神経 / 迷走神経 / 呼吸調節 / 炎症反応 / リモデリング |
研究実績の概要 |
酸素の不足も過剰も共に好気性生物の生存を脅かすので、酸素の需要と供給のバランスは個体、組織、細胞のあらゆるレベルで何重にも制御されている。このような制御を実行可能にするには、生体に酸素センサーが存在しなければならい。末梢神経(特に鼻腔から肺までの気道に分布する神経)に存在するTRPA1が酸素センサーとしての役割を果たしている可能性を検証し、また、長期間の低酸素・高酸素曝露による酸素リモデリングとその破綻・逸脱におけるTRPA1の役割を解明することが本研究の目的である。この目的を達成するために以下の実験を行った。 1)無麻酔自由行動下のマウスの呼吸を測定し、酸素濃度-呼吸出力関係を調べた。TRPA1欠損マウスは軽度低酸素による呼吸増強反応が減弱していた。重度低酸素と二酸化炭素吸入による呼吸増強は正常であった。TRPA1は仮説通り個体レベルの酸素センサーとして働いているが、低酸素が重度になると血中酸素濃度の減少にトリガーされた頸動脈小体の活性化による呼吸増強反応に隠れてその役割が見えにくくなるものと推測された。 2)TRPA1欠損マウスでは軽度低酸素環境への忌避行動が減弱していた。重度低酸素環境への忌避行動は正常であり、上述の呼吸増強反応と良く一致した結果であった。 3)TRPA1欠損マウスでは外科的侵襲による局所低酸素をトリガーとした炎症反応の進展が遅延していることが明らかになった。すなわち、個体レベルでも局所レベルでもTRPA1は酸素濃度検出に重要であることが明らかになった。 4)マウスを低または高酸素環境で長期間飼育した。これらによる肺の血管、心臓、血液(赤血球数)などのリモデリングを観察したところ、TRPA1欠損マウスでは低酸素による肺高血圧と高酸素による炎症性肺障害が共に増悪していた。すなわち、酸素リモデリングにも必須の分子であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験動物生体を対象とした研究なので個々の実験には時間がかかるものの、着実に進展している
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今後の研究の推進方策 |
昨年新たに導入した時間特異的ノックアウト動物を用いて、今まで得られたコンベンショナルノックアウトマウスでの結果を再確認する予定。
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備考 |
研究室独自ホームページ
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