公募研究
酸素の不足も過剰も共に好気性生物の生存を脅かすので、酸素の需要と供給のバランスは個体、組織、細胞のあらゆるレベルで何重にも制御されている。このような制御を実行可能にするには、生体に酸素センサーが存在しなければならい。末梢神経(特に鼻腔から肺までの気道に分布する神経)に存在するTRPA1が酸素センサーとしての役割を果たしている可能性を検証し、また、長期間の低酸素・高酸素曝露による酸素リモデリングとその破綻・逸脱におけるTRPA1の役割を解明することが本研究の目的である。この目的を達成するために以下の実験を行った。1)自由行動下のマウスの呼吸を測定し、酸素濃度-呼吸出力関係を調べた。TRPA1欠損マウスは軽度低酸素による呼吸増強反応が減弱していた。重度低酸素と二酸化炭素吸入による呼吸増強は正常であった。TRPA1は仮説通り個体レベルの酸素センサーとして働いているが、低酸素が重度になると血中酸素濃度の減少にトリガーされた頸動脈小体の活性化による呼吸増強反応に隠れてその役割が見え難くなるものと推測された。2)TRPA1欠損マウスでは軽度低酸素環境への忌避行動が減弱していた。また、低酸素による睡眠からの覚醒時間も延長していた。重度低酸素環境への忌避行動・覚醒は正常であり、上述の呼吸増強反応と良く一致した結果であった。3)TRPA1欠損マウスでは外科的侵襲による局所低酸素をトリガーとした炎症反応の進展が遅延していることが明らかになった。すなわち、局所レベルでもTRPA1は酸素濃度検出に重要であった。4)マウスを低または高酸素環境で長期間飼育した。これらによる肺の血管、心臓、血液(赤血球数)などのリモデリングを観察したところ、TRPA1欠損マウスでは低酸素による肺高血圧と高酸素による炎症性肺障害が共に増悪していた。すなわち、酸素リモデリングにも必須の分子であることが明らかになった。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Neuron
巻: 101 ページ: 60-75
10.1016/j.neuron.2018.11.017
Frontiers in Behavioral Neuroscience
巻: 12 ページ: 327
10.3389/fnbeh.2018.00327
巻: 12 ページ: 241
10.3389/fnbeh.2018.00241
http://www.kufm.kagoshima-u.ac.jp/~physiol1/