研究領域 | 行動適応を担う脳神経回路の機能シフト機構 |
研究課題/領域番号 |
17H05547
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
福土 審 東北大学, 医学系研究科, 教授 (80199249)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ストレス / 内臓感覚 / 神経伝達 / 受容体 / 刺激プログラム |
研究実績の概要 |
国民の健康を左右する要因として内臓感覚の比重が急激に高まっている。その代表的な病態が過敏性腸症候群である。本研究は、内臓痛の鎮痛適応を生み出す脳内神経伝達を明らかにする。これを脳機能画像の手法を中心に行う。具体的には、健常者と過敏性腸症候群患者を対象とする。方法としてヒスタミンH1受容体リガンド11C-doxepinとドパミンD2受容体リガンド11C-racloprideを用い、陽電子断層法(PET)を中心とする脳画像を得る。本年度は主に11C-racloprideについて研究を進捗させた。目的は、催眠下の鎮痛暗示により内臓痛を改善できる、鎮痛時に脳内でドパミンが放出される、の2仮説を検証することであった。これには定量的で効率良い対象選択を要する。そのため、情報端末を用いた対象選択法を開発し、全国の過敏性腸症候群診療施設の協力下にその信頼性妥当性を検証し、脳画像対象の選択方法を確立した。このような方法で選択した対象に11C-racloprideを静注し、無作為に催眠下で鎮痛暗示を与えた日と無意味な音節を与える対照日に分けて脳のPETを撮像した。同時にバロスタット装置を用いて直腸に20 mmHg、30 mmHg、40 mmHgの圧刺激を90秒ずつ10分間隔で負荷し、核種静注後に大腸刺激を再度繰り返した。大腸刺激直後に0-10の11段階のordinate scaleで腹痛、腹部不快感、不安を定量化した。催眠下の鎮痛暗示は大腸刺激による腹痛を抑制した。ドパミンD2受容体結合は左尾状核で鎮痛暗示時が対照時よりも有意に低下した。同様に左被殻でもドパミンD2受容体結合が低下した。以上により、前半仮説が支持された。対照時のD2受容体結合が高く、鎮痛暗示時に低いことから、鎮痛暗示時には内因性のドパミン放出が起こってD2受容体を占拠するものと考えられ、後半仮説も支持された。以上、申請書に記載した速度で分析が進んでいる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国民の健康を左右する要因として内臓感覚の比重が急激に高まっている。その代表的な病態が過敏性腸症候群である。本研究は、内臓痛の鎮痛適応を生み出す脳内神経伝達を明らかにする。これを脳機能画像の手法を中心に行う。内臓痛の鎮痛適応をヒトのデータから明らかにすることは、科学的な意義が非常に大きい。申請書記載に沿った研究が進行しており、研究の効率化のため、情報端末を用いた対象選択法を開発し、経頭蓋磁気刺激による鎮痛誘導のために使う磁気刺激プローブ把持を容易に整備した。研究実績の概要に記載した通り、申請書に記載した速度で分析が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
国民の健康を左右する要因として内臓感覚の比重が急激に高まっている。その代表的な病態が過敏性腸症候群である。本研究は、内臓痛の鎮痛適応を生み出す脳内神経伝達を明らかにする。これを脳機能画像の手法を中心に行う。内臓痛の鎮痛適応をヒトのデータから明らかにすることは、科学的な意義が非常に大きい。申請書記載に沿った研究が進行しており、研究の効率化のため、情報端末を用いた対象選択法も開発した。研究実績の概要に記載した通り、申請書に記載した速度で分析が進んでいる。当初の計画通り進展させることにより研究を進める方策で良いと判断する。
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