研究領域 | 行動適応を担う脳神経回路の機能シフト機構 |
研究課題/領域番号 |
17H05550
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
柳川 右千夫 群馬大学, 大学院医学系研究科, 教授 (90202366)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 抑制性ニューロン / GABAニューロン / グリシンニューロン / 遺伝子改変マウス / アデノ随伴ウイルス |
研究実績の概要 |
抑制性ニューロンはGABAニューロンとグリシンニューロンに大別される。一方、様々な機能プローブや蛍光タンパク質が開発され、神経回路研究に利用されている。しかし、特定のニューロンに限定して機能プローブを十分量発現させたり、発現のON/OFFを制御することは容易でない。そこで本研究では、テトラサイクリン発現誘導システムを利用し、遺伝子改変マウスとウイルスベクターとを組み合わせ、抑制性ニューロン全体、GABAニューロン及びグリシンニューロン選択的に機能プローブや蛍光タンパク質が発現するシステムの確立を目指した。 GABAニューロン特異的にテトラサイクリントランスアクチベーター(tTA)が発現するGAD67-tTAノックインマウスとGABAニューロン特異的にtdTomatoが発現するVGAT-tdTomatoトランスジェニックマウスとを交配してGAD67-tTA/VGAT-tdTomatoダブルトランスジェニックマウスを準備した。このダブルトランスジェニックマウスあるいは野生型マウス(コントロール)の海馬領域へテトラサイクリン応答因子を含むプロモーターの下流にGFP遺伝子を配置したアデノ随伴ウイルスを注入し、5日後、3週後、6週後にGFPとtdTomatoの発現を検討した。野生型マウスでは注入5日後にGFPの発現が検出されなかったが、3週後及び6週後ではGFPの発現が観察され、3週後以降のGFP発現はtTAの制御を受けない可能性が示唆された。一方、ダブルトランスジェニックマウスの注入5日後ではGFP陽性細胞の約88%がGFP/tdTomato2重陽性であり、GFP陽性細胞の殆どがGABAニューロンであると実証できた。 抑制性ニューロンを蛍光タンパク質で標識した遺伝子改変マウスやトランスジェニックラットの利用によりカハール間質核神経細胞の電気生理学的特性の解明などに貢献した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VGAT-tdTomatoトランスジェニックマウス海馬では、GABAニューロンがtdTomato赤色蛍光タンパク質で標識されているため、GABAニューロンの同定が容易である。このトランスジェニックマウスを活用することで、遺伝子改変マウスとウイルスベクターとを組み合わせによる海馬のGABAニューロン特異的発現が実証できた。一方、グリシンニューロン特異的遺伝子発現に用いるGLYT2-tTAノックインマウスは順調に繁殖させた。
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今後の研究の推進方策 |
海馬で観察されたGABAニューロン特異的発現の至適条件が、大脳皮質にも当てはまるかどうか検討する。また、本研究に用いているテトラサイクリン発現誘導システムではドキシサイクリンを投与すると遺伝子発現がOFFになるが、その至適条件(投与日数など)について検討する。それから、GLYT2-tTAノックインマウスとウイルスベクターとを組み合わせグリシンニューロン特異的発現の至適条件を検討する。
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