生物は、異なった文脈においても同じ行動を発現すべき時には同一運動を発現するが、大脳皮質の広域にわたる回路(一次運動野、M1と高次運動野、M2)の活動が異なった入力に対してどのように遷移してひとつの安定した出力を実現するかは不明である。平成29年度は、頭部固定マウスが内発性(自発的)におよび外発性(音刺激誘導性)にレバーを引くオペラント課題を実行中に、3次元2光子カルシウムイメージングをM1のみならずM2でも行う系を確立した。カルシウム感受性蛍光タンパク質のひとつ、R-CaMPの遺伝子をコードするAAVをマウスM2に導入し、その後2週間経ってタンパク質発現量が十分高くなってから、頭部固定下で右前肢レバー引き運動を内発性に(好きな時に)、または外発性に(音が鳴って数百ミリ秒以内にレバーを引くと水がもらえる)行うことを約2週間学習させた。またレバー軌道だけではなく、同時に前肢の動きや舌運動も高速CCDカメラを用いて計測した。課題実行中に2光子カルシウムイメージングをM2およびM1において3次元的に行い、2層から5層までの細胞活動のデータを取得することが出来た。その結果、M2にも内発性選択的に、または音刺激選択的に活動を示す細胞があること、両条件で同様に活動する細胞があることがわかった。さらにこの課題を実行中に様々な脳領域を不活性化させ、課題パフォーマンスに対する影響を解析することで、この課題に必要な領域を明らかにした。
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