公募研究
動物は自身が生み出す運動の結果を常にモニターし修正することで適切な運動能力を発達させる。また、運動経験を様々な脳領域に反映させることで多様かつ柔軟な運動制御を可能とする。本研究では運動経験のフィードバックを介した機能シフトにより運動回路が適応的に発達する過程を探ることを目的とする。このためショウジョウバエ幼虫をモデルとした研究を行う。具体的には単一細胞腫の可視化・操作技術やコネクトミクス解析など、幼虫で最近可能となった高度な中枢回路解析技術を駆使することで、機能シフトに関わる候補細胞および神経結合を特定し、体性感覚が機能シフトを伴う運動回路の発達を制御する仕組みを探る。我々の以前の研究により、幼虫の運動系は段階的な機能シフト(「筋肉の自律的な収縮」―「ギャップ結合を介した中枢回路の自発発火により誘導される運動」―「中枢パターン生成回路により生み出される運動」)を経て発達すること、この機能シフトは筋収縮の感覚フィードバックに依存することを明らかにしていた。今年度計画においては、上記過程の回路機構を探るため、体性感覚を主に担う感覚神経細胞であるmd class I neuronsからの入力を受け、かつ幼虫のぜん動運動の制御に関わっていることが以前の研究によって示されていたA27h介在神経細胞(Fushiki et al., 2016)に着目し、研究を進めた。その結果、A27hを含む少数の細胞においてgap junctionの機能を阻害すると、運動の発達が著しく阻害されることを見出した。このことは、体性感覚のフィードバックを反映させたA27h細胞の活動がgap junctionを介して運動回路の機能発達を制御している可能性を示唆している。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定通り、回路機能シフトに関わる有力な候補細胞および神経結合を特定した。
パッチクランプ法を用いてA27h細胞にgap-junction透過性の色素を導入し、この細胞と電気シナプスを介してつながっている細胞群を同定する。さらにgap-junctionを介したA27h回路の形成が感覚フィードバックを受けながらどのように機能発達するのかを調べる。
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (13件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Neuron
巻: 96 ページ: 1373~1387.e6
10.1016/j.neuron.2017.10.030
生体の科学
巻: 68(5) ページ: 478-479
http://bio.phys.s.u-tokyo.ac.jp/