公募研究
本研究では、大脳基底核の発達過程において直接路優位から間接路優位に変化する回路シフトのメカニズムの解明を通じて、パーキンソン病など大脳基底核の機能変化が関連する疾患の病態解明と新たな治療戦略を構築することを目的としている。パーキンソン病では黒質線条体系ドーパミンニューロンからのドーパミン入力の減弱により、間接路の障害によるパーキンソニズムが現れる。テトラヒドロビオプテリン(BH4)は、ドーパミンを初めとするモノアミンの生合成に必須な補因子である。研究代表者らは、BH4生合成第三段階の酵素であるセピアプテリン還元酵素(SPR)を破壊して、遺伝的背景の異なるマウスを交配することにより成獣まで生存できるSpr-KOマウスを作製した。Spr-KOマウスでは、BH4の欠乏からドーパミンを含めた脳内モノアミンが全て欠乏状態となっている。Spr-KOマウスは従来のドーパミンニューロン破壊マウスモデルでは観察されない振戦様の前肢の震えを示した。Spr-KOマウス上腕二頭筋と上腕三頭筋の筋電図を測定したところ、屈筋と伸筋がほぼ同時に収縮する異常な筋活動が観察された。また、淡蒼球外節においてユニット記録を行なったところ、筋電図の異常な活動と同様な周波数を示すバースト様の発火を観測した。また、Spr-KOマウスは胸骨が屈曲して亀の背の様な特徴的肢位を示し、胸腺の萎縮、生殖機能の低下など多くの老化様表現型を示した。以上の結果は、全身的なBH4欠乏を示すSpr-KOマウスが新たなパーキンソン病モデルマウスとなり、BH4欠乏が老化様表現型やパーキンソニズムの発現と密接に関連することを示唆した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 3件、 査読あり 6件) 学会発表 (10件)
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