公募研究
快情動行動が発現する際、ドーパミンがD1R-PKA-Rap1-MAPK経路を活性化させることで、側坐核のドーパミンD1受容体発現中型有棘神経細胞(D1R-MSN)が興奮性の低い状態から高い状態へとシフトし神経回路が作動し快情動行動が発現する(Nagai et al. 2016)。本研究では、これらの細胞内シグナル伝達機構の役割を分子レベルで観察・操作するために以下の研究を実施した。1)リン酸化蛋白質結合タンパク質14-3-3を神経細胞種特異的に発現させることにより、神経細胞種特異的なin vivoリン酸化プロテオミクス解析を行う技術を開発した。2)LOV-Trap法により光刺激依存的にRhoキナーゼの活性を制御する分子ツールを開発し、このツールを用いて、神経細胞の軸索形成時にRhoキナーゼが複数の軸索形成を抑制するメカニズムを解明した。3)ドーパミンD2受容体発現中型有棘神経細胞(D2R-MSN)における細胞内シグナル解析を行い、D2R-MSNにおいても、D1R-MSNとシグナル経路が活性化していることを見出した。4)側坐核において神経細胞の興奮性を制御するイオンチャネルを探索し、イオンチャンネルがリン酸化されることを見出した。5)側坐核特異的に転写因子をノックアウトするマウスを作製し、条件付け場所嗜好性試験などを用いて、神経可塑性が長期的な神経回路シフトを制御する機構を解析した。また、側坐核特異的にRhoキナーゼをノックアウトするマウスを作製した。
2: おおむね順調に進展している
1)in vivoリン酸化プロテオミクス解析は順調に進展しており、新たなリン酸化基質を同定しつつある。2)LOV-Trap法により光刺激依存的にRhoキナーゼの活性を制御する分子ツールは開発が完了した。3)ドーパミンD2受容体発現中型有棘神経細胞(D2R-MSN)における細胞内シグナル解析を行い、D2R-MSNにおいても、D2R-PKA-RAP1-MAPKシグナル経路が活性化していることを見出し、現在論文投稿準備中である。4)側坐核において神経細胞の興奮性を制御するイオンチャネルを探索し、イオンチャンネルがリン酸化されることを見出した。5)側坐核特異的に転写因子をノックアウトするマウスを作製し、条件付け場所嗜好性試験などを用いて、神経可塑性が長期的な神経回路シフトを制御する機構を解析した、論文投稿準備中である。また、側坐核特異的にRhoキナーゼをノックアウトするマウスの作製に成功した。
1)新たに開発したin vivoリン酸化プロテオミクス解析法を用いて神経細胞の回路シフトに関係するリン酸化基質を同定する。2)新たに開発したツールを用い個体内において光刺激依存的にRhoキナーゼの活性を制御する技術を開発する。3)D2R-MSN特異的な細胞内シグナル解析を行い、D2R-MSNにおける細胞内シグナル解析を進める。4)イオンチャネルのリン酸化が側坐核における神経細胞の興奮性を制御するメカニズムを解明する。5)作製した側坐核特異的にRhoキナーゼをノックアウトするマウス用い、条件付け場所嗜好性試験などを用いて、神経可塑性が長期的な神経回路シフトを制御する機構を解析する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (1件)
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