研究領域 | 行動適応を担う脳神経回路の機能シフト機構 |
研究課題/領域番号 |
17H05564
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
木下 専 名古屋大学, 理学研究科, 教授 (30273460)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | シナプス / 細胞骨格 / 海馬 / 認知 / 空間文脈 |
研究実績の概要 |
脳には細胞骨格成分が高発現するが、重合性GTPaseセプチン(SEPT1-14)も例外ではなく、疾患との関連も報告されている。Sept3欠損マウスの系統的行動解析において、迷路課題での空間定位・記憶は正常でありながら、空間文脈の認知・弁別が障害されていることがわかった。 類似情報の弁別には少数の細胞の同期発火によるスパースな表象が合理的とされる。嗅内野Ⅱ/Ⅲ層由来の貫通線維が投射する海馬歯状回(DG)顆粒細胞は強力な抑制性介在神経の作用もあって同期発火頻度が低い一方、その軸索(苔状線維)終末は特殊なシナプスを介してCA3錐体細胞を確実に発火させる。この回路特性が空間弁別に果たす役割が注目されてきたが、未解決問題も多いため、限局的な空間弁別障害を必発する遺伝子欠損マウスは貴重な研究対象となる。そこで野生型/Sept3欠損マウスDGへのAAVベクター局所注入による発現/枯渇実験によって空間弁別障害のレスキュー/再現を検証し、DGが責任領域であることと、神経回路発生異常に由来する不可逆的後遺障害でないことを示した。EC-DG-CA3-CA1間シナプスの精査により、DGのみでスパイン内滑面小胞体(ER)の減少を認め、初代培養顆粒細胞でのSEPT3枯渇によるスパインへのER侵入率の減少として再現されたが、海馬や大脳皮質の錐体細胞では再現されなかった。以上から、SEPT3要求性は顆粒細胞独自の特性といえる。後シナプス膜近傍のERはシグナル伝達やシナプス可塑性に不可欠なCa2+の供給源の1つであるが、当該シナプスでのERの生理的意義、ER侵入機構におけるSEPT3やスパイン基部に集積する他のセプチン・サブユニットの役割など、不明な点が多いため、引き続きこの問題に取り組む。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初代培養海馬神経細胞のライブイメージングでの条件検討に時間がかかっているが、他は概ね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
上記データの取得・解析後、全データを論文化して投稿予定。
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