研究実績の概要 |
本研究では、新規に開発する逆行性感染型ウイルスベクターや順行性感染型ウイルスベクターを利用して、特定の神経回路を構成するニューロン集団の選択的可視化や活動操作をおこなう新規手法を開発し、霊長類において神経回路の機能シフト研究をおこなうための基盤技術を確立するためのシステム開発研究を行っている。今年度は、ジャンクションが最適化されたキメラエンベロープタンパク質を利用したNeuRet型逆行性感染型レンチウイルスベクター(FuG-E)とHiRetベクターであるFuG-B2型の霊長類(マカク・マーモセット)およびげっし類(ラット)における感染動態や注入部位における免疫反応などの差異を線条体注入系において解析した結果、FuG-E型ベクターがどの種・どの投射系においてもFuG-B2型と同等以上の逆行性感染効率を示し、またFuG-B2型が注入部位において組織損傷と免疫誘導を引き起こすのに対し、FuG-E型は引き起こさないことを報告した(Tanabe et al., 2019 Sci Rep)。また、同様の解析を皮質注入系においても実施し、論文を投稿準備中である。一方、アデノ随伴ウイルスベクターのキャプシド改変を行い、霊長類において高い神経細胞選択性と外来遺伝子発現能を両立するウイルスベクターの開発に成功し、霊長類における化学遺伝学、光遺伝学、および光イメージングに適用した(論文投稿準備中)。さらに、独自に開発した狂犬病ウイルスベクターのゲノム改変によって作成した、ゲノム複製能や外来遺伝子発現量が異なる複数の感染伝播能欠損型ベクターの性状解析を行い、低細胞毒性型、長期発現型の伝播能欠損型狂犬病ウイルスベクターの開発を進めた。
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