研究領域 | 行動適応を担う脳神経回路の機能シフト機構 |
研究課題/領域番号 |
17H05566
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
平野 丈夫 京都大学, 理学研究科, 教授 (50181178)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 小脳 / 運動学習 / シナプス可塑性 / 長期抑圧 / ノルエピネフリン / アドレナリン受容体 |
研究実績の概要 |
マウスを用いた薬剤投与と行動実験を組み合わせた研究を行った。そして、小脳片葉領域のβアドレナリン受容体の活性化が、運動学習のモデルとされている視機性眼球運動の適応現象に関与すること、また前庭動眼反射のゲイン維持に関与することを示した。また、α2アドレナリン受容体活性化はβアドレナリン受容体活性に拮抗することを明らかにした。さらに、生体においてアドレナリン受容体活性化を引き起こすノルエピネフリンは、低濃度ではβアドレナリン受容体に作用し、高濃度ではα2アドレナリン受容体に作用することも明らかにした。これらの研究結果は、ノルエピネフリンがβおよびα2アドレナリン受容体を介して、視覚および前庭核入力に依存する2種類の反射性眼球運動制御各々に異なる作用をすることを示しており、こうした成果をまとめて論文発表した。また、行動実験とパッチクランプ法を用いる電気生理学実験も実施した。視機性眼球運動の適応を引き起こす訓練を行ったマウスから小脳片葉領域の切片を切りだし、平行線維・プルキンエ細胞間の興奮性シナプス伝達を調べた。その結果、運動学習を引き起こす訓練により、シナプス後部の伝達物質グルタミン酸に対する応答性が減弱し、またシナプス可塑性の一つである長期抑圧が引き起こせなくなることがわかった。この研究結果は、視機性眼球運動の適応という運動学習に際して、長期抑圧が起こっていることを示す重要な成果であり、研究内容をまとめて論文発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
視機性眼球運動および前庭動眼反射という2種類の反射性眼球運動の制御に、ノルエピネフリンが異なる作用をすること、また運動学習時に長期抑圧が発現していることを示す重要な成果を得て、各々論文発表できた。
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今後の研究の推進方策 |
上述したように、研究は順調に進捗していると判断している。今年度は、ノルエピネフリンおよびβまたはα2受容体活性化が、小脳片葉領域の長期抑圧にいかなる作用を及ぼすかを検討する電気生理学実験を中心に研究を進める。そして、ノルエピネフリンと長期抑圧および入力依存性が異なる2種類の反射性眼球運動の関係の解明をめざす。また、長期抑圧以外の可塑性が運動学習時に発現していないかの検討も行いたい。具体的には、抑制性介在ニューロン・プルキンエ細胞間のGABA作動性抑制性シナプスで起こる脱分極依存性増強が運動学習に際して起こっているか否かを調べる実験を計画している。
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