公募研究
本研究では、解剖学的および生理学的にヒトに近縁のマカクザルを用いて、脊髄損傷後の前頭葉運動関連領野でみられる可塑的変化を形態学的に明らかにし、機能回復の中枢メカ二ズムに迫ることを目的としている。具体的には、健常個体と脊髄損傷後の急性期と慢性期における運動関連領野の樹状突起および樹状突起スパインの形態変化と運動機能回復との相関について検討する。平成30年度は前年度に引き続いて、「大脳運動関連領野における錐体細胞の樹状突起と樹状突起スパインの形態学的解析」を中心に研究計画を遂行した。まず、健常個体において皮質内微小刺激法により同定した一次運動野、補足運動野、運動前野背側部および腹側部の4つの運動関連領野の手指領域を対象にして、ゴルジ染色法を用いて、皮質脊髄路の起始ニューロンである各領野の第V層巨大錐体細胞の樹状突起と樹状突起スパインの形態を解析した。樹状突起については、Sholl analysisによりその形態(複雑さ)を解析し、樹状突起スパインについては、細胞体から20 μmに位置するスパイン数をカウントすることによりその局在分布を解析するとともに、形状を5種類(filopodia、thin、stabby、mushroom、branched types)に分類し、成熟スパインか未成熟スパインかを判定した。その結果、運動関連領野間における皮質脊髄路の起始ニューロンの形態学的差異が明らかになった。次に、脊髄損傷後の急性期(約10日後)における樹状突起および樹状突起スパインの形態変化を解析した結果、脊髄損傷後の運動機能の低下に伴って、各運動関連領野に分布する巨大錐体細胞の樹状突起の長さは短縮し、スパインの密度は低下していることが明らかになった。以上の結果は、脊髄損傷による運動機能低下には、一次運動野だけでなく運動関連領野全体が関与している可能性を示唆している。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (29件) (うち国際学会 10件) 備考 (1件)
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