公募研究
動物はまわりの状況を判断してどういう行動をとるかを決める。本研究では、動物のモデルとして熱帯魚であるゼブラフィッシュを用いて、その逃避行動を研究している。ゼブラフィッシュ稚魚に全ての周波数の音が混在したホワイトノイズを5分間聞かせると、突然の水音を聞いた時にとる逃避行動が低下する「環境適応」が実験室レベルで再現できることが分かり、また、グリシン受容体タンパク質の動態を蛍光タンパク質でタグしたグリシン受容体タンパク質を発現させることで生体内でライブイメージングして、ゼブラフィッシュ稚魚にホワイトノイズを聞かせると、マウスナー細胞という逃避を駆動する神経細胞においてグリシン受容体タンパク質がシナプス部位に集合することが見出されている。ホワイトノイズを聞くことで誘導されるこの一連の逃避行動の変化について、ホワイトノイズを聞く→マウスナー細胞におけるグリシン受容体タンパク質がシナプス部位に集合する→マウスナー細胞への抑制性シナプス伝達が増強される→マウスナー細胞の神経発火が抑制される→突然の水音を聞いた時の逃避行動が低下という作業仮説を立て、その機能シフト機構の分子メカニズム解明を進めた。ゼブラフィッシュ稚魚にホワイトノイズを聞かせると、抑制性シナプスの足場タンパク質であるゲフィリンがリン酸化されることが分かり、ゲフィリンがリン酸化されるとグリシン受容体との親和性が高まることが確認されつつある。このゲフィリンのリン酸化こそが、環境適応を担う機能シフト機構の分子実体であると考え、ゼブラフィッシュ稚魚でゲフィリンのリン酸化状態をGAL4/UASシステムを用いた遺伝学的手法で人口操作すると、ホワイトノイズによって誘導されるマウスナー細胞におけるグリシン受容体タンパク質のシナプス部位への集合が変化すること、ホワイトノイズによる突然の水音を聞いた時の逃避行動の低下が変化することが確認された。
2: おおむね順調に進展している
もともと雨予定していた研究を遂行しており、研究は順調に進展していると言える。
現在の研究を続けるとともに、本研究におけるカルシウムイオンの重要性にせまる解析を予定している。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
eNeuro
巻: 4 ページ: 1
10.1523/ENEURO.0194-16.2017