本年度は、昨年度に確立したPACE法を応用し、コドンタグレポーターmRNAの翻訳をアンチセンスオリゴで特異的に阻害した場合に、コドンがmRNAの安定性に与える効果の差が消失するかどうかを検証した。その結果、確かにコドン効果は翻訳依存的であることが確認された。またコドン効果とtRNAの関係を詳細に検討するために、ゼブラフィッシュ初期胚のtRNA発現情報との比較を行った。その結果、mRNAを不安定化するコドンに対応するtRNAは、その発現量が有為に低いことが確認された。次にコドン効果とtRNA量の相関が持つ意義を実験的に検証するため、アスパラギンを加水分解してアスパラギン酸に変換する大腸菌の酵素AnsBをゼブラフィッシュ胚内で過剰発現し、アスパラギン酸の枯渇によってアミノアシル化されたAsn-tRNAレベルを人為的に低下させた。その結果、AnsB過剰発現状態ではアスパラギンに対応するAACコドンが、mRNAを不安定化するように変化することが明らかとなった。さらにチロシン、ヒスチジン、アスパラギン、アスパラギン酸のコドンを解読するtRNAのアンチコドン部位に導入される修飾塩基であるキューオシンを導入する修飾酵素Qtrt1のゼブラフィッシュ相同遺伝子をCRISPR-Cas9によって破壊した変異系統の作成を試み、フレームシフト変異を引き起こす系統を得ることができた。現在この変異体におけるコドン効果の解析を進めており、結果を踏まえて論文として発表する予定である。
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