研究実績の概要 |
1.線虫のS-アデノシルメチオニン(SAM)合成酵素をコードするsams-3遺伝子のノンコーディングmRNAを発現する選択的スプライシング制御を可視化する蛍光レポーター線虫を作製し、SAM合成酵素自身のノックダウンや飢餓によってレポーターの発現が変動することを確認した。sams-3のノンコーディングmRNAを誘導する食餌の大腸菌中の成分の特定を進めており、界面活性剤不溶性タンパク質性の成分が寄与していることを見出した。 2.線虫の細胞質リボソームタンパク質をコードする82個のrp遺伝子のうち8個について、ノンコーディングmRNAを産生するような選択的スプライシングを受けることで発現量の恒常性が維持されていることを見出した。そのうち、L10aタンパク質がL10AREと命名したイントロン内の作動エレメントに直接結合することで選択的スプライシングを自己制御すること、その機構が哺乳類にまで進化的に保存されていることを報告した。 3.線虫のRNA結合タンパク質PTB-1が哺乳類の相同遺伝子と同様に自身のmRNA前駆体の選択的スプライシングを制御してノンコーディングmRNAを産生させることで発現量を負に自己制御していることを見出した。東京大学理学系研究科の飯野雄一教授らとの共同研究により、スプライシング制御因子ASD-1, FOX-1, PTB-1, UNC-75が協働してインスリン受容体をコードするdaf-2遺伝子のエクソン11.5の神経細胞種特異的な選択的スプライシングを制御し、ASER細胞におけるこのエクソンの制御が飢餓時の記憶の形成に必要であることを明らかにした。 4.線虫のmRNAプロセシング制御(組織特異性、発生段階依存性、ノンコーディングmRNAの産生と品質管理による発現量の制御、遺伝学的解析方法、他の生物との比較など)についての総説を発表した。
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