公募研究
ゲノムプロジェクトの成果から、「ゲノム上のがらくた」と思われてきた領域には、タンパク質をコードしないnon-coding RNA (ncRNA) が多量に存在することが分かってきた(Kapranov P、Science, 2007)。その中でmiRNAを代表とする小さなRNAの機能解析は進んでいるが、200塩基以上の長い ncRNA(long non-coding RNA, lncRNA)は、個体レベルで機能が明らかになった例は僅かであり、その生理的な役割を明らかにすることが求められている。我々が発見したFat60 lncRNAの個体での機能を解析するためノックアウトマウスを作製したところ、一部個体で、発生に異常を示すマウスが出現することを明らかにした(未発表データ)。更に興味深いことに、表現型は性差を示すことが分かった。異常は雌KOマウスで見られるが、雄では異常は殆ど見られない。また、このような異常は同腹の野生型の個体では見られない。また、異なるESラインから作製したKOマウスにも同様の異常が見られたことから、表現型はlncRNAをKOしたことに由来すると想定される。KO胎仔の形態異常が「どの細胞」で「いつ」起こるか特定する目的で、胎仔期を遡り、発生の各ステージでの組織切片の詳細な解析を行った。組織切片、及び細胞の種類を染め分ける免疫染色による組織学的な解析を行った結果、異常を起こす組織及び、特定の細胞種を絞り込むことに成功した。更に、体系的、網羅的遺伝子発現解析を行うことにより、lncRNA破壊と表現型との関連を分子レベルで明らかにする手がかりを得た。lncRNAの機能を分子レベルで理解する大きな一歩であると考える。
2: おおむね順調に進展している
表現型の解析が一通りまとまったので、論文投稿中。
今後、個体のみならず細胞も用いて、より詳細な分子メカニズムの解析を進める。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 6件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (3件) 備考 (2件)
Cell Mol Life Sci.
巻: 75(7) ページ: 1191-1203
10.1007/s00018-017-2703-x.
Sci Rep.
巻: 8(1) ページ: 2380
10.1038/s41598-018-20614-8.
Genes Cells.
巻: 23(3) ページ: 146-160.
10.1111/gtc.12560.
Dev Growth Differ.
巻: 59(6) ページ: 493-500
10.1111/dgd.12365.
Proc Natl Acad Sci U S A.
巻: 114(33) ページ: E6734.
10.1073/pnas.1711468114.
巻: 114(23) ページ: 5988-5993.
10.1073/pnas.1701425114.
http://www.tmd.ac.jp/mri/epgn/shin_kobayashi.html
http://www.molprof.jp/research/qpt1.html