長鎖ノンコーディング RNA (lncRNA) は、無脊椎動物から脊椎動物まで存在し、少なく見積もってもその数は数千から万のオーダーにのぼる。しかしながら、機能解析が行われた lncRNA は未だ多くなく、中でもタンパク質をコードする遺伝子と同じ向きでオーバラップして転写される lncRNA の解析は、特に遅れている。我々はに甲殻類オオミジンコにおけるオス決定遺伝子 Dsx1 の転写後制御機構を解析している過程で、予想外に Dsx1 5´ UTR のみをコードする RNA を卵に注入するとオス化が生じることを発見した。この発見がきっかけとなり、Dsx1 の上流から同じ向きで転写され Dsx1 5´ UTR の配列を含む lncRNA、DAPALR (Dsx1 Alpha Promoter Associated Long RNA) がオス特異的に発現し、これが Dsx1 を活性化しオス化を誘導することを見出した。また、DAPALR は Dsx1 をトランスに活性化することが可能であり、Dsx1 活性化に必要な作動エレメントは Dsx1 の 5´ UTR と重なる 205 塩基の中に存在することを明らかにした。そして、DAPALR の作用機構を明らかにするために、作動エレメントに結合する タンパク質を複数同定した。平成30年度は、これらのタンパク質が結合する配列の候補が作動エレメント中に存在することを見出した。候補因子をコードする遺伝子のノックダウン、過剰発現解析を行うことで、これらの因子が翻訳レベルでDsx1の発現を制御していることを示唆する結果を複数得た。
|