研究領域 | ノンコーディングRNAネオタクソノミ |
研究課題/領域番号 |
17H05609
|
研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
北川 大樹 国立遺伝学研究所, 分子遺伝研究系, 教授 (80605725)
|
研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | lncRNA / 細胞分裂 / 中心体 / 紡錘体 |
研究実績の概要 |
lncRNA(長鎖非コードRNA)は幅広い生命現象に関与するが、重要な生命現象である細胞骨格の形成制御を行うものに関しては発見されていない。微小管重合をin vitroで再構成した古典的な実験からは、中心体からの微小管形成過程に機能的なRNAの存在が示唆されていたが、未だその同定には至っていない。そこで、微小管ネットワーク-中心体に局在するlncRNAの探索を行ってきた。その過程で発見された新規lncRNA、CENNA-1(SARA-1)は極めて特異な性質を示した。このlncRNAは分裂中の微小管プラス端に局在し、その発現抑制は紡錘体形成、動原体-微小管結合、染色体分配に深刻な影響を与えた。CENNA-1は分裂期prometaphaseにおいて、微小管プラス端に局在し始めるが、その際にCLIP170に物理的に相互作用することを確認した。この結果から、このタンパク質複合体形成がその後の微小管プラス端と動原体の効率的な結合を促進していることが考えられた。本年度においては、CLIP170の活性化をCENNA-1がどのような構造変化を介して促進するのか? その分子機構に関して、in vitro及び細胞内における解析を行った。その結果、CENNA-1がCLIP170のZinc-Knucklesに相互作用し、CLIP170の構造変化を起こすことで、CLIP170が微小管に結合することができることを示唆するデータを取得することに成功した。現在は、このモデルをサポートするために各種の実験を行い、作用機構を明確化することを目的として 研究を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究における研究課題の一つである新規lncRNA(CENNA-1/SARA-1)の分裂期紡錘体形成における機能解析に関しては、当初の計画以上の進展を見せ、表現型の詳細な解析またその作用点としてのCLIP170活性制御に関してのデータの取得がほぼ終了し、第一報の論文を投稿するに至った。その詳細な分子メカニズム、特にin vitro系において分子相互作用を示すための実験が今後の課題であるが、現在までは論文投稿に十分なデータセットを取得するなど、研究は順調に進んでいると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
CENNA-1(SARA-1)の細胞分裂過程における機能解析に関しては、このように予定していた以上に研究が進展しているが、検討するべく課題が新たに出てきているのが現状である。また、生化学的に精製した中心体分画におけるlncRNAの網羅的な同定に関しては、シークエンス解析が終了し、現在サンプル間比較の情報解析を行っている。次年度は、 1.GO term、遺伝子発現表現型、過去の文献などの関連情報と照らし合わせ、予想されるncRNAの機能の分類を行う。 2.中心体に特異的に局在するncRNAの進化的保存性に関して、多様なモデル生物のゲノム情報を利用することで検討する。そして、各モデル生物の中心体の有無との相関の抽出を行う。 3.同定された各ncRNAの細胞内局在解析(中心体に局在するかどうかをFISH法またはMS2-Coat法により解析) 1-3の解析を、既に進行している細胞分裂期における表現型解析に加えて精力的に進める。上記行程を進めることにより、より詳細な機能解析を行うべきlncRNAの選別を行い、研究全体の取りまとめを行う。
|