研究実績の概要 |
多くのRNAは、タンパク質と複合体を形成して機能を果たすと考えられていることから、RNAの機能を分子的に理解するためにはRNAに結合するタンパク質を明らかにすることが重要である。本研究計画では、iSRIM法(in vitroにおいて特定のRNAに結合するタンパク質を同定する手法)及びChIRP-MS法(in vivoにおいて特定のRNAに結合するタンパク質を同定する手法)の両手法を比較しながら用い、特定のRNAに結合するタンパク質同定基盤技術の確立を目指すとともに、確立した技術を用いRNAの成熟過程、機能、制御機構の解明を目指す。平成29年度は、それぞれの技術の確立のために、特異的な結合タンパク質が知られている7SK-ncRNA、TNF-α mRNA、TFRC mRNAの3’UTR領域を用い、RNA及びその結合タンパク質の精製、質量分析による結合タンパク質の同定実験について、細胞の量、固定方法、細胞溶解液の組成、細胞の破砕方法、アンチセンスオリゴの種類等の条件検討を行い、プロトコルの確立を目指した。その結果、ベイトRNA特異的に既知の結合タンパク質(7SK RNAについてCDK9, CyclinT, Hexim, LARP7, MEPCE、TNF-α mRNAについてRC3H1/2やZFP36L1/2、TFRC mRNAについてIRP1/2等)が効率よくかつ特異的に同定される実験条件を見いだすことに成功し、実験プロトコルを確立した。さらに、レポーターRNAを用いたChIRP-MS法の開発を行い成功、レポーターRNAの下流に様々な目的RNA配列をつないだコンストラクトを用いることで、全く同じ実験条件のもと様々なRNAに結合するタンパク質を同定、ベイトRNA間で結合タンパク質の比較が可能となった。
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