多くのRNAは、タンパク質と複合体を形成して機能を果たすと考えられていることから、RNAの機能を分子的に理解するためにはRNAに結合するタンパク質を明らかにすることが重要である。我々は質量分析を用い、RNAに結合するタンパク質を同定する技術の確立を目指している。今年度は、去年度開発したReporter-ChIRP-MS法を用い、10種類のmRNAの3’UTRについてそれぞれに結合するタンパク質の同定実験および結合タンパク質の機能解析を行なった。その結果、それぞれのmRNAに結合するタンパク質として1000種類以上のタンパク質を同定可能である事、その中から各mRNA特異的な結合タンパク質を選び出し機能解析を行うことにより、結合したmRNAの翻訳量や分解量を制御する働きを持つタンパク質を同定できることも明らかとした。また、同一のmRNAについても、細胞の培養条件の違いにより結合するタンパク質に大きな変化が現れることも明らかとした。さらに、mRNAに結合するタンパク質として同定されたタンパク質の中には、翻訳開始タンパク質群やポリA末端に結合するタンパク質群、mRNAの翻訳を行なっていると考えられるリボソーム、それぞれのmRNAから作られている合成中の新生タンパク質鎖が含まれており、それぞれに定量比較が可能であることも明らかとした。これらの結果は、Reporter-ChIRP-MS法を用いることにより、mRNAの3’UTRに結合する重要な制御タンパク質が同定できるだけでなく、mRNA上の翻訳の状態をモニターできることを示しており、mRNAの制御を解析する上で非常に重要なツールとなりうると考えられる。我々はまた、新学術領域内においてiSRIM法及びChIRP-MS法を用いたRNA結合タンパク質同定に関わる複数の共同研究を行い、それぞれにおいて重要な結合タンパク質の同定に成功している。
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