研究領域 | 細胞競合:細胞社会を支える適者生存システム |
研究課題/領域番号 |
17H05614
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
松村 寛行 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 助教 (70581700)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 表皮基底細胞 / COL17A1 / ヘミデスモソーム / 細胞競合 |
研究実績の概要 |
細胞競合と呼ばれる現象は、異常細胞を排除することで組織恒常性を維持し、上皮組織の発癌抑制に関わることが示唆されている。しかしながら、哺乳類の表皮を構成する表皮基底細胞において、どのような遺伝子が関わり、細胞競合が起こっているのか、殆ど分かっていない。申請者らは、これまでに毛包幹細胞の17型コラーゲンが、ゲノム損傷ストレスに応じて、加齢とともに分解を受けることで、毛包がミニチュア化し、永久脱毛につながる仕組みを明らかにしてきた(Matsumura et al., Science 2016)。この研究から、ゲノム損傷ストレスにより癌遺伝子変異を獲得した細胞が、17型コラーゲンの発現制御による細胞競合機構を介して排出されることで異常な細胞の増殖を抑制している可能性があるという考えに至った。そこで、本研究では表皮と真皮を結合させるための構造体であり、表皮維持や再生に必須なヘミデスモソームの構成因子である1 7 型コラーゲンおよび、インテグリンα6が異常な細胞の排除に関わるのか検証する。ヘミデスモソーム構成因子の発現を増減させた細胞の運命を追跡できる3次元培養実験系や成体マウスで表皮基底細胞の運命を解析できるマウス実験系を用いて、ヘミデスモソーム構成因子の発現制御によって細胞競合が起こるのか検証し、その仕組みを解明する。これにより、ヘミデスモソーム構成因子の未知の役割を解明し、細胞競合の基本原理解明に繋げることを目的とした。本年度では、ヘミデスモソーム構成因子である1 7 型コラーゲン(COL17A1)および、インテグリンα6(ITGA6)の発現制御により細胞競合を引き起こすのか、その検証とその実態の解明を目的として、遺伝子改変株化細胞の2/3次元培養を駆使して、培養表皮基底細胞によるin vitro細胞競合の解析システムを構築に成功している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒト培養ケラチノサイトHaCaT細胞株の2/3次元培養による表皮基底細胞の細胞競合の実験系の構築 イヌ腎上皮(MDCK)細胞実験系において、RAS変異細胞は、細胞競合により排除される現象が観察されている(Hogan et al., Nature Cell Bio 2009)が、角化細胞において、RAS変異は腫瘍形成に関わるが、細胞競合に関わるのか明らかにされていない。そこで、まず、ヒト培養ケラチノサイトHaCaT細胞の2/3次元培養モデルを用いて、細胞競合が起こるのか、検証を行った。具体的には、ヒト培養ケラチノサイトHaCaT細胞株に、GFP蛍光遺伝子を発現しながら、テトラサイクリン誘導性に遺伝子発現、もしくは、遺伝子抑制できるベクター導入安定細胞株を作製した。次に、これら細胞株と野生型HaCaT細胞と適量比で混合し、テトラサイクリン誘導後、GFPを指標にFACSを用いたGFP陽性細胞数のカウントや、ライブイメージングなどにより、変異細胞と野生型細胞とで細胞競合が起こるのか検証を行った。また、3次元培養では、培養カップ上で、高密度で表面を空気にさらしながら共培養させることにより、表皮基底細胞の角層への分化誘導し、混合細胞株を重層化させ、GFPを指標に重層化させた組織断面を観察することにより、GFP陽性変異細胞と野生型細胞とで細胞競合が起こるのかどうか検証を行った。これらの結果から、培養角化細胞において、Ras変異過剰発現細胞の細胞競合の検出に成功している。
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今後の研究の推進方策 |
in vitro表皮基底細胞の細胞競合実験系を用いて、ヘミデスモソーム構成因子の発現変化が細胞競合に関わるのか検証する ヘミデスモソーム構成因子は、表皮維持に重要な分子であるが細胞競合に関わるのか、全く明らかにされていない。そこで、上記実験系を用いて、まず、ヘミデスモソーム構成因子の発現を増減させた細胞において細胞競合にどのように関わるのか検証を行う予定である。また、癌変異獲得細胞に加えて、ヘミデスモソーム構成因子の発現を増減させた細胞において細胞競合にどのように関わるのか検証を行う予定である。
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