公募研究
乳がんの多くは、単一のLuminal細胞から発生するが、がん進展に伴いLuminal、Basal-like両細胞系譜が混在する不均一ながん組織を形成することが知られる。この不均一性は、乳がん治療を困難にする。我々はまずBasal-like型乳がんにおいてしばしば発現の低下するRBに注目した。2次元培養されたLuminal 型乳がんMCF-7におけるRBの発現抑制は、細胞競合様のapical extrusionを誘導した。また、マウス乳腺由来細胞の3次元培養により誘導した、管腔側を内側に単層の乳腺上皮が並び、外側を筋上皮細胞で裏打ちするスフェロイドの乳腺上皮においてRBがモザイク状に欠失する状態を誘導したところ、やはり細胞競合様の挙動を観察した。正常乳腺上皮細胞では、Luminal-Basal細胞間コミュニケーションにより細胞系譜の乗り換えが制限されている。しかし、がん細胞ではその制限を乗り越え他方の細胞系譜に乗り換えることで不均一ながん組織を形成する。LuminalからBasal細胞へのEMTにより細胞系譜転換が誘導され、不均一性が形成されていると仮説を立てた。我々は、EMT進行中および乳がん細胞系譜間で2種のスプライシングバリアントの発現をスイッチさせている遺伝子Nuclear transcription factor Y subunit alpha (NFYA)を同定した。さらに、これら2種のスプライシングバリアントがEMTの過程で段階的に機能することによって、細胞系譜転換を開始させるスターターと細胞系譜転換を促進させるブースターとしての役割を果たしていた。NFYAがEMTに伴いスプライシングバリアントの発現パターンを変えることで段階的に2つの機能を果たし、がんの不均一性形成を制御していることを示唆している。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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