公募研究
細胞競合は,適応度の異なる細胞が共存するときに,一方の細胞が勝者となり,他方の細胞(敗者)を組織から排除する現象である.近年,敗者-勝者が相互作用することで,様々なシグナルが活性化され異方的な力が発生することで,勝者細胞が敗者細胞を押し出すことが示されてきている.例えば,敗者細胞を取り囲む勝者細胞では,アクチンとミオシンからなるアクトミオシンリングが形成され,そのリングが巾着袋の口を締めるように収縮することで敗者細胞の排除が進むことが示されいる.これまでに研究代表者らは,非熱的に加工ができるフェムト秒レーザーの誘起衝撃力を利用して,ゼブラフィッシュ胚の上皮で起こる細胞競合で発生する物理的な力の大きさを定量評価し,約4kPaの力が発生していることを発見した(生体内力定量系の確立).しかも最近,研究代表者らは,アクトミオシンが収縮するよりも前に,敗者から勝者へ向けカルシウム波が伝播し,そのシグナルによってアクチン動態が変化して細胞の極性移動が起こることを見出した.さらに,そのカルシウム波の伝播には,メカノチャネルTRPC1,ギャップ結合,IP3受容体が関与することも突き止めた.以上の成果は,細胞競合を駆動する分子メカニズムを明らかにしただけでなく,シグナルが物理的な力へ変換される情報物理学的なメカニズムを明らかにしたことを意味しており,この研究領域の理解に貢献したと考えている.
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Current Biology
巻: 30 ページ: 670~681.e6
doi: 10.1016/j.cub.2019.11.089
Scientific Reports
巻: 9 ページ: 12156
doi: 10.1038/s41598-019-48585-4
Cell Reports
巻: 27 ページ: 928~939.e4
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