公募研究
高脂肪食などの過栄養は,全身の様々な臓器に影響を与え,組織恒常性の破綻の誘因となる可能性が示唆されている。高脂肪食は,骨髄微小環境の変化を促すこと、造血幹細胞の再生能を低下させることなどが報告されているが、どのような因子が幹細胞機能の制御に関与しているか詳細は明らかではない。本研究において,我々は、高脂肪食による栄養的ストレス下において,Spred1が造血幹細胞の恒常性を保つ上で極めて重要な役割を果たすことを見いだした。Spred1は,c-Kit結合分子としてクローニングされ,Rafの負の制御因子として知られる。また,SPRED1遺伝子の異常は,皮膚,神経,骨格異常を示す遺伝疾患(Legius症候群)で認められ,RAS/MAPK経路の活性化を示す他の遺伝疾患とともにRAS-MAPK経路症候群(RASopathy)と呼ばれる。我々は,通常の状態では,Spred1はRhoA/ROCK経路・アクチン重合の調節を介して自己複製の抑制因子として機能していることを見出した。また,Spred1の欠損状態では,自己複製能の亢進を介して,感染や加齢などによる幹細胞障害を回避できる反面,高脂肪食による過栄養状態では,造血幹細胞の機能障害が生じることが観察された。このことから,本経路が,個体レベルの栄養環境変化に反応して,幹細胞の運命制御に寄与する重要な経路であると考えられた。本シグナルの詳細な解析と人為的に変化させる技術開発を進めることによって、幹細胞老化の本態を理解し、アンチエイジングなどの革新的医療技術の開発に寄与できると考えられた。
1: 当初の計画以上に進展している
前年度まで推進してきた基盤研究で得られた成果や材料を十分に活用し、解析を進めることができたため、順調に研究が進展していると考えられる。
栄養シグナルに関する未分化性制御メカニズムの解明を進め、さらにエイジングとの関連について理解を深めることを目標とする。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 4件)
Biochem Biophys Res Commun.
巻: 495 ページ: 1129-1135
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Cell Stem Cell
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
none
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10.1038/s41598-017-11909-3
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