現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)老化マウスにおける精子幹細胞の頻度および分裂活性の測定:野生型の老化マウス(24ヶ月齢)の精巣にて免疫組織染色を行い、未分化型精原細胞マーカーであるPLZF,GFRA1,CDH1などの発現細胞の頻度およびMKI67・TUNEL染色との共染色により分裂活性および細胞死の頻度を調べたところ、24ヶ月齢ではコントロール(3ヶ月齢)と差異が見られなかった。しかし老化モデルマウスalfa-klothoノックアウトマウス(7-8週齢)では増殖活性の亢進が見られた。In vivoにおける精子幹細胞の自己複製活性を調べるため、内因性精子形成の欠損しているWマウスへ精巣内移植を行い、移植後2ヶ月にて精巣を摘出しコロニー数を測定し、さらに継代移植を行った。また、alfa-klothoノックアウトマウスからGS細胞を樹立したところ、コントロールの野生型細胞に比べ、ホモ欠損細胞の増殖亢進が認められた。増殖亢進と老化による代謝活性の変化の関わりを調べるため、野生型老化マウスもしくはalfa-klothoノックアウトマウスから、抗EPCAM抗体を用いて純化した未分化型精原細胞についてフラックスアナライザーにてミトコンドリア代謝と解糖系への依存度を調べた。(2)環境側のもたらす老化制御因子の検索:環境側の老化制御因子をスクリーニングするため、内因性精子形成の欠損しているWマウスを用いて調べた。若いマウス(約6-8週齢)と高齢のマウス(生後2年)の精巣を摘出し、CAGE(Cap Analysis of Gene Expression)法にて遺伝子発現を比較した。差異の認められた遺伝子についてノックダウンもしくは強制発現が精子形成に及ぼす効果を調べるため、レンチウイルスにて精巣内に直接遺伝子を導入した。
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今後の研究の推進方策 |
29年度に引き続き、in vivo 精子幹細胞 老化の表現型を探索する。(1)alfa-klotho 欠損 GS 細胞を用いて、老化関連遺伝子のスクリーニングを行う。精子幹細胞マーカー(CDH1, EPCAM, alfa6/beta1-integrinなど)や、分化型精原細胞マーカー(c-Kit)の発現をフローサイトメトリーにて調べるとともに、マイクロアレイ解析によりホモ変異 GS細胞で発現量が変化する遺伝子群のスクリーニングを行う。またヒストン修飾トリメチル化 H3K4およびトリメチル化H3K27のChIP-シークエンスによる老化原因遺伝子の網羅的解析を行う。老化原因遺伝子の候補について、レンチウイルスベクターにて強制発現もしくはsiRNA/shRNAを用いてノックダウンを行い、増殖速度やサイトカインへの反応性・遺伝子発現パターン・代謝・移植による幹細胞活性などを調べ、老化表現型との相関を明らかにする。(2)環境側のもたらす老化制御因子の検索を行う。 29年度にCAGE法により得られた環境側老化制御因子候補に関して、セルトリ細胞にレンチウイルスにて遺伝子操作を行うとともに、CRISPRライブラリーを用いてノックアウトし、精子幹細胞および精子形成におよぼす効果を定量的に判定する。(3)ラット精子幹細胞の老化の検討を行う。EGFP を発現する SD 系統トランスジェニックラットについて、約20-24ヶ月齢と3-4ヶ月齢の精巣細胞をヌードマウス精巣に移植する。2ヶ月後に精巣を摘出し、UV照射によりドナー由来コロニー数を測定する。また、老化ラットの精巣にて免疫組織染色を行い、未分化型精原細胞マーカーPLZF,GFRA1,CDH1の発現細胞の頻度およびMKI67・TUNEL 染色との共染色により分裂活性と細胞死の頻度を調べる。
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