研究実績の概要 |
本研究ではin vitroとin vivoにおける精子幹細胞の老化を比較し、その差異と共通点を明らかにすると共に、老化精巣の支持環境について老化制御因子を探索し、幹細胞への影響を明らかにすることを目指した。平成30年度の研究では、老化モデルであるalfa-Klotho knockoutマウスにBusulfanを投与し内因性精子形成を除去した精巣の遺伝子発現をマイクロアレイ解析により調べ、野生型とホモ個体で発現量が変化する遺伝子を検索した。29年度にWマウス(先天的に内因性精子形成が欠損)精巣のCAGE(Cap Analysis of Gene Expression)法により得られた若い個体と老化個体の遺伝子発現比較のデータと照らし合わせ、共通する遺伝子を精巣の支持環境側の老化関連遺伝子の候補として絞り込んだ。候補遺伝子について、セルトリ細胞にレンチウイルスにて遺伝子操作を行い、精子幹細胞および精子形成におよぼす効果を調べた。また野生型ラットの精子形成の老化による影響を調べた。SD(Sprague-Dawley)系統では24ヶ月齢でも精子形成の変化が乏しかったため、精巣老化が比較的早く進行するとされているBN(Brown Norway)系統について、8週齢と24ヶ月齢の精巣を比較した。24ヶ月齢のBNラット精巣では半分以上の個体で精巣重量や精子形成の低下が認められ、精子形成の老化モデル動物としてBNラットが適していることが分かった。さらに24ヶ月齢のBNラット精巣について免疫染色を行ったところ精細管内における未分化型精原細胞マーカーPLZF,GFRA1の発現細胞の割合は亢進していることが分かった。
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