公募研究
平成29年度においては、8-10週齢のTie2-Angptl2 Tgマウス由来造血幹細胞やAngptl2の受容体として機能することが報告されたPirBのKOマウス由来造血幹細胞を用いた競合的連続骨髄移植実験を実施した。Angptl2 KOマウス由来造血幹細胞を用いた連続移植実験では、野生型マウスに比べKOマウス由来造血幹細胞が高い骨髄再構築能を示したが、PirB KOマウス由来造血幹細胞の骨髄再構築能は野生型マウスと同等であった。これまでの我々の研究からANGPTL2の高発現はROSの産生やp38 MAPK活性化といった造血幹細胞老化を引き起こすシグナル経路活性化することが明らかとなっていたことから、野生型マウスに比べTie2-Angptl2 Tgマウス由来造血幹細胞の骨髄再構築能は低下すると予想されたが、逆に野生型マウスより高い骨髄再構築能を示した。野生型、Angptl2 KO、Tie2-Angptl2 Tg、PirB KO、Tie2-Angptl2Tg; PirB KOマウス由来造血幹細胞を用いて、ex vivoにおける増殖能を評価した。その結果、野生型マウスとAngptl2 KOマウス由来造血幹細胞の増殖能に差を認めなかったが、Tie2-Angptl2 TgとPirB KOマウス由来造血幹細胞の増殖能亢進が認められた。また、Tie2-Angptl2Tg; PirB KOマウス由来造血幹細胞は、Tie2-Angptl2 Tgマウス由来造血幹細胞に比べ部分的に増殖能の低下が認められた。一方、我々はこれまでにα5β1インテグリンがANGPTL2の受容体として機能していることを明らかにしていることから、野生型およびTie2-Angptl2 Tgマウス由来造血幹細胞をα5β1インテグリン中和抗体存在条件で培養したところ、いずれの造血幹細胞も増殖能が抑制されることを見出した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の計画通りTie2-Angptl2 TgおよびPirB KOマウス由来造血幹細胞を用いた競合的連続骨髄移植実験を実施し、造血幹細胞におけるPirB欠損はその骨髄再構築能に影響しないこと、ANGPTL2の高発現は想定外にも骨髄再構築能亢進につながることを見出した。さらに、各種遺伝子改変マウス由来造血幹細胞のex vivoにおける増殖能評価から、既報通りANGPTL2が増殖を促進すること、ANGPTL2高発現による増殖促進作用は部分的ではあるがPirBを介していること、α5β1インテグリンシグナルは造血幹細胞の増殖に重要であることが明らかとなった。しかし一方で、PirB KOマウス造血幹細胞も増殖能の亢進が認められたことから、PirBシグナルは造血幹細胞の増殖を負に制御している可能性も十分に考えられた。以上のように、想定外の結果も得られるなど、本研究計画は順調に進展しているものと考えられる。
平成30年度では、高齢Tie2-Angptl2 Tgマウス由来造血幹細胞の骨髄再構築能を評価することで、造血幹細胞におけるANGPTL2高発現と幹細胞老化との連関を評価するとともに、野生型、Tie2-Angptl2 Tg、PirB KO、Tie2-Angptl2Tg; PirB KOマウス由来造血幹細胞の骨髄再構築能を比較し、in vitroにおけるANGPTL2-PirBシグナルの意義を明らかにする。さらに、野生型お呼びTie2-Angptl2 Tgマウス由来造血幹細胞にPirBを過剰発現し、そのex vivoにおける増殖能を評価するとともに、PirB過剰発現造血幹細胞やα5β1インテグリン中和抗体で処理した造血幹細胞の骨髄再構築能を評価する。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件) 図書 (3件) 備考 (1件)
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