研究領域 | 新生鎖の生物学 |
研究課題/領域番号 |
17H05656
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
姚 閔 北海道大学, 先端生命科学研究院, 教授 (40311518)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 新生鎖の合成 / 合成速度の調製 / リボソームPストーク / タンパク質工学 / X線構造解析 |
研究実績の概要 |
リボソームによる新生鎖合成のメカニズムが明らかになってきた現在,その得られた情報をもとに,新生鎖合成を自在に制御できるような次世代型新生鎖合成システムの創成が期待されている.本研究は,大腸菌をモデルとして,新生鎖合成に必要なエネルギーを供給するGTPaseを運搬するストークの足場タンパク質L10の改変によって真核の性質を持つキメラ型L10を作製し,それに結合するL12二量体(バクテリア)又はP1二量体(真核型)の個数を調節することで,新生鎖の合成速度を人工的に数段階調節できるタンパク質合成システムを創出することを試みる. そのため,平成29年度に,予備実験に基づいて大腸菌リボソームストークの足場タンパク質L10のL12結合部位の改変を最適化し,1個L12二量体しか結合できないL10変異体L10(CH1)の作製を試みた.さらに,L10(CH1)にP0(CH2)を融合し,1個L12二量体と1個P1二量体にそれぞれ結合できる変異体L10(CH1)P0(CH2)を作製してみた. L10,およびL10変異体の大量調製には,文献を参考にし,L12と共発現した複合体(WT:L10-L12L2-L12L12の5量体、変異体:L10-L12L2の3量体)を変性することによってL10とL12をそれぞれ抽出し,精製することができた.また,別々に精製したL10とL12を用いて複合体の再構築も確認できた.P1については,すでに確立した方法で大量調製した.それぞれ精製したL10の変異体,L12とP1を混合して,ゲルろ過クロマトグラフィーとSDS-pageを用いて確認したところ,L12とP1がL10(CH1)P0(CH2) に結合していることが分り,キメラL10の変異体を確定することができた.今後,大腸菌と真核型の伸長因子EF-G,EF-2を用いてキメラストークとの結合を確認する.また,現在のL10, L12の精製法によって得られたサンプルの純度が不十分であかり,小角散乱により溶液中の会合状態を解析するため,精製条件の検討が必要であることがわかった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年は、研究計画の通りに、1個L12二量体しか結合できない変異体L10(CH1),1個L12二量体と1個P1二量体のそれぞれに結合する変異体L10(CH1)P0(CH2)の作製ができた.作製したL10変異体L10(CH1)がL12,L10(CH1)P0(CH2)がL12,およびP1との結合も確認できた.このことから,大腸菌の変異株の作製設計が可能となる.今後,大腸菌と真核型の伸長因子EF-G,EF-2を用いてキメラストークL10(CH1)P0(CH2)-L12L12-P1P1との結合が確認できれば,大腸菌変異株の作製が始められる.
以上の結果から、本研究はおおむねに順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度の実験結果から、分かった問題を解決しながら,申請当初に計画した実験を実施する.
1.平成29年度の実験結果から分かったL10とL12の精製純度について,今年度中に精製方法と条件を検討することによって,改善する. 2.L10(CH1)P0(CH2)の作製法と同様に,L12とP1結合部を交換したL10変異体 L10(CH2)P0(CH1),およびその変異ストークの作製を成功させ,L12およびP1との結合能力を調べる.必要に応じて研究協力者である内海教授が構築した活性系でin vitroの活性測定を行う.L10(CH2)P0(CH1)とL10(CH1)P0(CH2)のGTPaseの運搬能力を検討する. 3.異なる合成速度をもつ新生鎖合成システムの構築について、既に作製したL10(CH1),L10(CH1)P0(CH2),L10(CH2)P0(CH1)に基づいて発現用の大腸菌変異株の作製を試みる.L10は必須タンパク質であるため,これを欠損させた変異株は,通常の条件では生育できない.よって,本研究では,Cas9を用いたゲノム編集法で、大腸菌ゲノムのL10遺伝子を直接操作してL10(CH1),L10(CH1)P0(CH2),L10(CH2)P0(CH1)の変異株を作製する.必要に応じて,L10の変異体を最適化する.変異株の発現能力が確認できたら,大腸菌のWTと変異株を用いて,様々な条件でモデルタンパク質の発現量を比較することによって変異株の新生鎖合成速度を評価する.
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備考 |
本研究には,プレリミナリーな結果が得られ、論文する前に、研究成果をwebページに公開することができないが、研究室のホームページに新生鎖の合成についての研究を掲載している。
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