プロテアソームによる効率的な蛋白質分解には、ポリユビキチン化だけでは不十分で、基質蛋白質自身にUnstructured領域が必要である。我々は、新生鎖の運命決定にもUnstructured領域が関与していると考え、プロテアソームによる異常新生鎖分解に対するCAT-tail などのUnstructured領域の影響を検討した。 CAT-tail などのUnstructured領域のプロテアソームによる分解への影響を調べた結果、翻訳アレストを引き起こすポリリシンなどの連続塩基性アミノ酸配列は、この配列を取り付けたモデル蛋白質の分解を引き起こさないことがわかった。これに対し、アレスト配列の後に取り付けられるCAT-tailは、強い分解誘導効果を持つことが明らかとなった。このことはCAT-tailは翻訳アレスト異常新生鎖をリボソームから追い出し、ポリユビキチン化を促進するだけでなく、プロテアソームによる分解をも促進していることを示唆している。 しかしながら20残基以上の長いCAT tailは、高濃度な細胞内環境で凝集を起こしやすいことがわかった。Ssa1やそのコシャペロンであるSis1は可溶性の短いCATtailとはほとんど相互作用しないが、長いCAT-tailの凝集体に巻き込まれるような形でCAT-tailと相互作用するらしい。 酵母においてこのような長いCAT-tailを持つ蛋白質を過剰発現すると、酵母の生育阻害を引き起こし、高い細胞毒性を示した。この高い細胞毒性は細胞内のCAT-tail蛋白質の凝集体量と相関していた。 以上より異常新生鎖へのCAT-tailの付加はプロテアソームによる分解を促進するものの、過剰なCAT-tail付加異常新生鎖は分子シャペロンを巻き込んだ凝集体形成につながり、細胞内のプロテオスタシスネットワークに破綻をきたすのではないかと考えられる。
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