研究実績の概要 |
新規末端ペプチド濃縮法であるCHAMP法を開発し、末端プロテオーム解析プラットフォームを確立するとともに、新生鎖プロテオーム抽出のための安定同位体パルス標識法と組み合わせることにより、タンパク質新生鎖の大規模末端プロテオーム解析を実現することを目的としている。今回新たに開発したN, C末端ペプチド同時濃縮法であるCHAMP法(CHArge-Mounted Positional separation by ion exchange chromatography)は、プロテアーゼによる消化とその後のイオン交換クロマトグラフィーのみで構成される。本年度はタンパク質N末端ペプチドの濃縮法確立に注力し、イオン交換クロマトグラフィーとして、タンパク質分離用HPLC-SCXカラムを用い、アイソクラティック溶離条件下でタンパク質N末端ペプチドを内部切断ペプチドからほぼ完全に分離することに成功した。またプロテアーゼによる消化条件も精査し、切れ残りを最大限抑制した。ヒト培養細胞株HEK293および大腸菌をモデル試料として、N末端解析を行ったところ、タンパク質N末端ペプチドの含有率95%以上で濃縮することに成功した。また、HEK293では約90%のN末端はアセチル化修飾を受けていた。一方、タンパク質C末端ペプチド濃縮においてもHPLC-SCXによる高分離能分離は有効で、プロテアーゼによる消化後、アミノ基を化学修飾することにより、効率よく濃縮することが可能であった。オミクスによる俯瞰と従来の個別分子解析は、相補的であり相乗効果も期待でき、本法を用いた新生鎖産生の新規制御機構の解明が期待できる。
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