研究実績の概要 |
新生膜タンパク質の膜組込みに関わる膜タンパク質の構造解析を進めた。Sec経路の構成要素であるSecDFは、基質輸送の過程で構造変化することが知られており、特にP1ドメインと呼ばれる可溶性ドメインが大きく可動して新生タンパク質と相互作用しているとされている。その構造変化をより細かく明らかにすべく本計画では、様々な条件で結晶化を試み、未解明の構造状態を明らかとすべく、構造解析を行った。 その結果、T.thermophilus由来のSecDFのこれまで知られていなかった構造状態を決定した。この構造は既知のF formよりもP1headドメインが脂質膜に近くまで曲がっていたことからSuperF formと命名し発表した(Furukawa et al, 2018 Structure)。この状態では、これまで知られていたP1ドメインの構造変化の他に、P1ドメインと膜貫通ドメインをつなぐ領域の可溶性ドメインの構造がβシートがβバレル型へと大幅に構造変化していた。このような構造変化はこれまでに見つかったことのないタイプの構造変化であった。この構造変化を阻害するような変異を導入したところ、輸送活性が低下した。プロトン輸送に関わる膜貫通領域と、新生タンパク質の輸送に関わるP1headドメインの間をつなぐ部分に大きな構造変化を見つけたことで、これまで不明であったプロトン濃度勾配のエネルギーがP1ドメインによる新生鎖の引き上げに利用される仕組みについての仮説を提唱することが出来た。
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