研究領域 | 新生鎖の生物学 |
研究課題/領域番号 |
17H05673
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
阪口 雅郎 兵庫県立大学, 生命理学研究科, 教授 (30205736)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 生体膜 / オルガネラ / 膜透過 |
研究実績の概要 |
真核細胞内で、リボソームから伸長する新生鎖のオルガネラ局在化前の滞留時間及び存在の状況を探知することを目的に、SFVのカプシドプロテアーゼドメイン(CP)を使ったプローブを開発し、シグナルペプチドの機能、小胞体トランスロコンでの正電荷や疎水性配列の透過状況の定量ができるようになった。 シグナル配列の特性によって、新生鎖の透過様式が切り替わること、細胞において疎水性配列のみならず正荷電残基も明確な透過抑制を示すことが明らかとなった。また、特定の遺伝子欠損によって、シグナル配列の機能亢進や抑制が認められた。さらに、遺伝子欠損により疎水性配列の透過挙動にのみ影響の表れるいくつかの遺伝子を見出した。基本的なトランスロケータ機能は維持できているにもかかわらず、チャネルとしての質的な変化が検出できた。トランスロコンの質的変動に関わる因子の検出が可能となり、関連因子の詳細機能解析が可能となった。これまで翻訳後の膜透過に関わると教科書にも記されているSEC71, SEC72について、合成共役型膜透過に関わることを見出し、リボソームとトランスロコンとの接合状況を制御する機能が示唆した。また、小胞体内腔シャペロンの欠損によって、合成共役型の膜透過が亢進するとの予想外の知見を得た。トランスロコンの中度疎水性鎖の受容部位に関しては、部位特異的クロスリンク解析をほぼ完了し、論文作成中である。膜タンパク質小胞体標的化抑制因子については、有力候補であるnmt1の構造機能相関の解析のために点変異体十数種の構築を完了し、機能解析を進行中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新規フォールディングプローブによる酵母遺伝子変異株の膜透過状況解析は順調に進行できている。これまでに、透過不全のみならず、想定外の透過機能亢進が見られる変異を多数見出すことができている。また、小胞体内腔のシャペロン因子群の量的変動によって膜透過状況が亢進または抑制されることを見出し、合成共役型の膜透過に多用な内腔因子の関与が明らかになった。今後に向けて、多数の発見がなされた。トランスロコン内の中度疎水性配列受容部位に関して、親水性鎖とは異なる架橋パターンとなるトランスロコンの部位を複数見出し、論文完成につながった。さらに今後、当該の解析につなげる。小胞体標的化抑制に関しても、ノックダウン実験の再現が確実であることを抑え、その後のレスキュー実験も成功し、構造機能相関の解析に進めている。以上のように、予想程度の着実な進展があったと認められる。
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今後の研究の推進方策 |
酵母のトランスロコン膜透過機能に影響を及ぼす変異について、透過共役性、疎水性配列認識機能、疎水性配列膜組み込み機能、正荷電クラスタ認識機能、小胞体内腔からの透過駆動機能、内腔因子によるトランスロコン制御、等の多彩な側面から各因子について解析する。トランスロコン機能部位については、化学架橋によって見出された新規機能性部位に関して系統的な変異導入と遺伝子シャフリングの方法を用いて機能部位変異の効果を、フォールディングプローブを駆使して解析し論文発表につなげたい。膜タンパク質小胞体標的化抑制因子nmt1の作用を確定し、論文発表を行う予定である。
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