研究領域 | 新生鎖の生物学 |
研究課題/領域番号 |
17H05677
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
伊藤 拓宏 国立研究開発法人理化学研究所, ライフサイエンス技術基盤研究センター, ユニットリーダー (70401164)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ウイルス / 生体分子 / 電子顕微鏡 / 翻訳 / 翻訳開始 |
研究実績の概要 |
精製したヒト由来因子によって再構成した試験管内翻訳システムを用いて、クライオ電子顕微鏡を用いた立体構造解析のための試料を調製した。具体的には、新生鎖配列によって一時停止させたリボソームをN末端側に付加されたPAタグにより精製した。この翻訳停止中のリボソームにHCV IRESを加えて、ハイジャック前複合体を調製し、クライオ電子顕微鏡により最終的に3.9Åの分解能で構造決定した。また、ハイジャック後複合体についても調整法を確立し、最終的に3.9Åの分解能で構造決定した。これらにより、HCV IRESによる宿主翻訳機構の乗っ取りメカニズムについて新たな機構を提唱した。 ピコルナウイルスの2Aペプチドによるリボソームスキッピングのメカニズムを明らかにするため、1位のグリシンまで合成した状態で、-1位のプロリンにペプチド転移反応を起こさずにリボソームを一時停止させたい。そのために、tRNA(Gly)の2'にOHではなくNHを介してグリシンが結合している分子を使用することにした。末端構造を化学合成することについて、専門家による予備的な合成実験は成功し、大量合成へと進めている。 宿主の翻訳開始に機能する翻訳開始因子eIF4Aについて、翻訳阻害剤RocAと連続プリン配列、ATPアナログの4者複合体の結晶構造解析に成功した。RocAはeIF4Aと一本鎖プリンRNAによって特異的に形成される分子間のくぼみにはまり込むことを明らかにした。本結晶構造によりRocAのプリン特異的な翻訳阻害メカニズムの詳細を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的としている標的の構造解析に成功しており、ほぼ計画通りに進行しているため。
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今後の研究の推進方策 |
IRESによるハイジャック機構をさらに検証し、原著論文として発表する。また、ピコルナウイルス2Aペプチドのリボソームスキッピングのメカニズムを明らかにすべく、一時停止リボソームの調製法を確立し、クライオ電子顕微鏡による立体構造解析へと進める。
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