これまで、リボソーム品質管理(RQC)においてユビキチン化された不良新生鎖の引き抜きを実行するCdc48-Ufd1-Npl4複合体のユビキチン結合コファクターNpl4がLys48結合型ユビキチン鎖に選択性をもつこと、Cdc48-Ufd1-Npl4複合体によるユビキチン化基質の引き抜き活性がユビキチン化反応を終結させるというモデルを示してきた。本年度は東京大学定量生物学研究所の深井博士と共同でNpl4とLys48結合型ユビキチン鎖との結晶構造解析に成功したため、Cdc48-Ufd1-Npl4複合体の生化学解析を精力的に実施した。まず、Cdc48-Ufd1-Npl4複合体の試験管内再構築系により、Npl4のZFドメインがCdc48 との相互作用に重要であること、Ufd1はNpl4を介してCdc48と複合体を形成すること、Npl4はUfd1存在下でCdc48との相互作用が増強することを見出した。また、同複合体のユビキチン鎖認識機構を解析したところ、Npl4のみがユビキチン鎖結合能をもつこと、構造解析より見出された新規のユビキチン結合ドメインの変異によりユビキチン鎖結合能が喪失することを明らかにした。次いで、ユビキチン化基質としてGFPに様々な長さのLys48結合型ユビキチン鎖を付加したものを調製し、同複合体の機能解析に供した。その結果、6-mer以上の鎖長をもつユビキチン化GFPを基質としたときに、Cdc48のATPase活性が検出され、複合体形成やユビキチン結合能を喪失させたNpl4変異体ではATPase活性が減弱した。さらに、酵母を用いた解析より、NPL4の各変異体中でユビキチン化基質の蓄積が観察された。これらの結果より、RQC機構の中核となるCdc48-Ufd1-Npl4複合体のユビキチン鎖認識機構の解明に成功した。
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