タウの細胞間伝播は、細胞外腔に存在し、凝集核としての性質を有するseed tauによって進行すると考えられる。本研究では、正常に細胞外へ分泌されるモノマータウと、seed tauをbiosensor細胞によって区別することで、どのような分子メカニズムがseed tauの細胞外放出に関与するのかを明らかにすることを目的とした。特にタウの分泌がER-Golgiを介したconventional secretionの阻害剤brefeldin Aで抑制されないという実験結果に基づき、unconventional secretion pathwayとして知られる、Type I: 細胞膜貫通型、Type II: Secretory autophagyの関与について検討した。近年Type I : 細胞膜貫通型分泌にはHSPGが関与し、HSPGの硫酸化阻害剤sodium chlorateによって阻害されることが報告されている。しかしながらsodium chlorateの投与によりseed分泌はむしろ亢進することが明らかになった。次にType II: secretory autophagyの関与を調べるためにautophagy促進剤、阻害剤をドナー細胞へ添加する実験を行った。その結果autophgy促進剤によりseedタウ量を増加させ、secretory autophagyの関与と反する結果となった。Autophagy抑制剤として用いたchloroquineの短時間処理では、細胞内のタウ量は変動しなかったが、培地中のseed tau量は上昇した。またこの分泌上昇はexosome分泌阻害剤であるGW4869やBAPTA-AMの同時投与によって阻害されたことからchloroquine刺激によるseed tau分泌にはexosomeやcalcium依存性の分泌機構が関与することが考えられた。
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