オートファジーは細胞内の代表的な分解系であり、異常なタンパク質やオルガネラを分解することで細胞内の恒常性を維持している。この作用は神経細胞で特に重要であり、最近、ヒトオートファジー関連遺伝子WDR45への変異が認知症やパーキンソン様症状を伴う脳神経変性疾患SENDAを引き起こすことが明らかとなった。しかし、WDR45の細胞内局在や機能についてはほとんど解明されていない。そこで本研究では、身体が透明で発生が体外で起こることからライブイメージングなどのin vivo解析が容易なゼブラフィッシュをモデルとして用いて、WDR45およびWDR45Bの生体内における細胞内局在解析をゼブラフィッシュを用いて解析した。さらにこれらの因子を欠損させたゼブラフィッシュを作製し、それらの脳神経系を含む全組織における表現型の比較解析を行った。その結果、WDR45およびWDR45Bは生きたゼブラフィッシュの脳神経系において隔離膜に局在化するが、骨格筋などの非神経系組織では明らかな隔離膜局在を認めないことが明らかとなった。さらに、WDR45およびWDR45B二重欠損ゼブラフフッシュは受精後5カ月前後で致死となることを見出した。一方、WDR45またはWDR45Bの単独欠損ゼブラフィッシュは受精後12か月以上も生存した。WDR45およびWDR45B二重欠損ゼブラフフッシュの神経系細胞内にはp62陽性の凝集体の蓄積を認め、オートファジー異常が示唆された。本研究の成果は、オートファジー関連因子群による神経変性抑制のメカニズムの解明に繋がると考えられる。
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