研究領域 | 脳タンパク質老化と認知症制御 |
研究課題/領域番号 |
17H05693
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
貝淵 弘三 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (00169377)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | タウオパチー / リン酸化シグナル伝達 / プロテオミクス |
研究実績の概要 |
本研究では神経変性疾患の分子病態基盤を明らかにするため、次の2つの研究課題に取り組んだ。1)前頭側頭葉変性症原因遺伝子プログラニュリンが関わる疾患シグナル伝達基盤解明、2)MAPT-R406W疾患アリルが関わる分子病態基盤の解明。本年度において私どもは、リン酸化情報データベース”KANPHOS”を用いたin silico解析や生化学的解析から、PKAやCaMKII、PKCαがマウスTau-Ser203やThr220をリン酸化することを見出した。プログラニュリンの疾患アリル導入マウスでは、当該セリン残基部位のリン酸化が増加していることが分かった。また、KANPHOSを活用したリン酸化コンセンサス配列解析から、MAPT-R406W変異は周囲のセリンリン酸化(hTau-Ser404, Ser409)に影響を及ぼすことが予測された。私どもはiPS細胞株(MAPT-R406Wヘテロ変異を有する認知症患者由来iPS、およびゲノム編集技術により作製されたホモ変異導入株やアイソジェニック細胞株)を用いてタウのSer409リン酸化解析を行ったところ、R406W変異はSer409リン酸化を阻害することを見出した。Phos-tag PAGEを用いたイムノブロット解析から、Rho-kinaseがSer409リン酸化やタウ過リン酸化に関与することを示唆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究代表者は、リン酸化情報データベース”KANPHOS”を用いたin silico解析や生化学的解析から、PKAやCaMKII、PKCαがマウスTau-Ser203やThr220をリン酸化することを見出した。プログラニュリンの疾患アリル導入マウスでは、当該セリン残基部位のリン酸化が増加していることが分かった。また、KANPHOSを活用したリン酸化コンセンサス配列解析から、MAPT-R406W変異は周囲のセリンリン酸化(hTau-Ser404, Ser409)に影響を及ぼすことが予測された。私どもはiPS細胞株(MAPT-R406Wヘテロ変異を有する認知症患者由来iPS、およびゲノム編集技術により作製されたホモ変異導入株やアイソジェニック細胞株)を用いてタウのSer409リン酸化解析を行ったところ、R406W変異はSer409リン酸化を阻害することを見出した。Phos-tag PAGEを用いたイムノブロット解析から、Rho-kinaseがSer409リン酸化やタウ過リン酸化に関与することを示唆した。これらの知見から、リン酸化情報データーベースを用いたin silico解析やリン酸化プロテオミクス解析はタウオパチーの病態解明に貢献しつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに研究代表者は、MAPT-R406W変異がSer409リン酸化を阻害すること、そして当該リン酸化はRho-kinaseが関与していることを示唆する予備的結果を得ている。そこで次年度では、MAPT-R406Wの分子病態とRho-kinaseシグナル伝達の関わりについて検討する。具体的には、Rho-kinase活性化がR406W変異によるタウ過リン酸化を抑制することに着目して、野生型およびR406W変異タウ安定発現株にRho-kinaseを共発現させた細胞ライセートからのタウ免疫沈降産物を質量分析することで、タウのリン酸化部位を網羅的に同定する。そして、同定したリン酸化部位欠損変異体を作製してタウの機能評価を行う。
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