研究領域 | 脳タンパク質老化と認知症制御 |
研究課題/領域番号 |
17H05704
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
太田 悦朗 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (60508042)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | LRRK2 / iPS細胞 / パーキンソン病 / 認知症 / タウ / microRNA / 炎症 / ミクログリア |
研究実績の概要 |
優性遺伝パーキンソン病(PD)の原因分子であるLRRK2に変異をもつ患者は、孤発性PDと類似した特徴を示すことに加え、認知症の併発が一部で報告されている。この認知症を併発したPD患者の病理では、アミロイド沈着による老人斑やリン酸化Tauによる神経原線維変化が散見される。本研究では、変異LRRK2がTauを介した神経変性に及ぼす影響を明らかにするために、iPSC由来神経幹細胞移植免疫不全マウスを作製した。その結果、線条体に移植したPD患者iPSC-NSは、39週の長期移植において生着し、神経細胞およびアストロサイトに分化していることを確認した。さらに興味深いことに、一部マウスミクログリアがAmeboid状の形態を示すこと、細胞質増大のiPSC由来アストロサイトの周囲にミクログリアが存在することから、マウス脳内で神経炎症が生じている可能性が考えられた。また、移植後3、10、20、31週のiPSC-NS移植マウスでは、Ameboid型からRamified型ミクログリアへ、さらには再びAmeboid型ミクログリアに変化する前段階のReactive型ミクログリアへの経時的な形態変化を確認した。現在、Tauの細胞間伝播について解析中である。 microRNAを用いた直接誘導法によって、ヒト正常皮膚線維芽細胞から部位特異的神経細胞の作製を試みた。その結果、miR-9/miR-124単独ウイルスベクターによる誘導系において、神経細胞の作製に成功した。さらに、miR-9/miR-124、DLX1/2、CTIP2、MYT1Lの各ウイルスベクターを用いた誘導系において線条体特異的なmedium spiny neuronの作製に成功した。 4R-Tauの病態を調べるために、長期培養160日のPD患者および遺伝子修復iPSC由来神経細胞におけるマイクロアレイ解析を行った。現在、詳細を解析中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、研究計画Ⅰ)PD患者由来iPS細胞を用いた3R-Tauおよび4R-Tauの病態解析、Ⅱ) microRNAを用いた部位特異的神経細胞への直接誘導法による病態解析に加えて、Ⅲ) iPSC由来神経幹細胞移植免疫不全マウスの神経免疫に関する解析を進めることができ、研究が滞ることがなかった為。
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今後の研究の推進方策 |
今後、研究計画Ⅱ)のPD患者の皮膚線維芽細胞から患者脳内のエピジェネティック修飾を反映した部位特異的神経細胞を作製し、病態解析を進めることで、新規解析ツールとしてのmicroRNAを用いた直接誘導法の確立を目指す。また、iPSC由来神経幹細胞移植免疫不全マウスの病態解析から、Tauの細胞間伝播および神経炎症機構の解明を目指す。
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備考 |
「難病患者iPS細胞を修復」読売新聞、社会34面、2017年4月3日
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