優性遺伝パーキンソン病(PD)の原因分子であるLRRK2に変異をもつ患者は、孤発性PDと類似した特徴を示すことに加え、認知症の併発が一部で報告されている。この認知症を併発したPD患者の病理では、アミロイド沈着による老人斑やリン酸化Tauによる神経原線維変化が散見される。本研究では、変異LRRK2がTauを介した神経変性に及ぼす影響を明らかにするために、iPSC由来神経幹細胞移植免疫不全マウスを作製した。その結果、線条体に移植したPD患者iPSC-NSは、39週の長期移植において生着し、神経細胞およびアストロサイトに分化していることを確認した。また、一部マウスミクログリアがAmeboid状の形態を示すこと、細胞質増大のiPSC由来アストロサイトの周囲にミクログリアが存在していることから、マウス脳内で神経炎症が生じている可能性が考えられた。そこで、Ramified型およびAmeboid型ミクログリアがみられた移植後31 週のiPSC-NS 移植SCID マウス線条体における炎症関連遺伝子群のmRNA 発現レベルを調べた。その結果、PD 患者iPSC-NS 移植SCID マウス群では、健常者およびゲノム編集iPSC-NS 移植SCID マウス群に比べ、p38、IL-1β、TNF-α、iNOS、RelA のmRNA発現レベルが増加していることがわかった。 microRNAを用いた直接誘導法を応用し、成熟iPSC-NS由来神経細胞の作製をを試みた。その結果、miR-9/miR-124単独ウイルスベクターを感染させたiPSC-NS由来神経細胞では、MAP2陽性細胞数の増加、神経突起長の伸長がみられた。
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