研究領域 | 新光合成:光エネルギー変換システムの再最適化 |
研究課題/領域番号 |
17H05713
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
丸山 真一朗 東北大学, 生命科学研究科, 助教 (50712296)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 葉緑体 / 光合成 / 進化 / 集光アンテナ複合体 / 紅藻 |
研究実績の概要 |
現存する植物の光合成機能を最大限に活用し、改良するためには、「光の利用」と「光からの防御」のバランスを再最適化することが最も有望であると考えられている。その両方に直接関わるのが集光アンテナ複合体タンパク質(LHC)であり、これまでLHCは主に緑色植物(緑藻と陸上植物)の系統で研究が行われてきたが、その進化的起源や多様性は十分に研究されてきたとは言い難い。特に、全地球上の約半分の一次生産を担うと言われる水圏で、紅藻や紅藻由来二次共生葉緑体を持つ珪藻や渦鞭毛藻などの光合成装置で働くと言われている多様なLHCファミリーについては、機能解析はほとんど行われていない。 我々は、LHCを完全に欠損した単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolae(以下シゾンと呼ぶ)の変異株の光合成特性を解析することで、「集光」と「消光」という一見正反対の機能を持つLHCが、初期の葉緑体進化のどの段階で獲得されたのかを明らかにすることを目的に研究を進めて来た。その結果、集光アンテナ装置の欠損により、細胞増殖のみならず、光合成反応中心へのエネルギー移動効率も影響を受ける可能性が示された。これらのことは、緑色植物の研究からは知り得なかったLHCのもつ新規の機能の存在を示唆しており、光物理生化学的にも重要な知見を与えるだけでなく、始原的な葉緑体において働いていたことが想定されている集光アンテナ装置の原始的な機能についても機能的側面からの示唆を与える貴重な結果であると言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究で、今年度の当初の目標であった光化学系Iに関連した消光機能と集光アンテナ装置との進化的関係の理解が飛躍的に深まったことなどから、計画は順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は新学術領域内での共同研究を緊密に進めていくことで、変異株の表現型と遺伝子の進化機構についてより詳細な解析を行い、論文発表へとつなげていく。
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