研究領域 | スクラップ&ビルドによる脳機能の動的制御 |
研究課題/領域番号 |
17H05743
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
木山 博資 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (00192021)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ミクログリア |
研究実績の概要 |
本研究では軸索損傷などにより著しく変化する細胞内の構造や、あるいは周辺のグリア細胞との相互作用に焦点をあて、そこで展開されるスクラップ&ビルドの実態を明らかにするとともにその意義の解明を目指している。 29年度は特に損傷神経細胞とインターラクションするミクログリアに焦点をあてた。ミクログリアは脳内の貪食細胞としても知られており細胞の残骸やシナプスなどを貪食することにより、神経軸索再生促進、毒性分子の除去、回路形成など様々な機能を有している。ミクログリアによるスクラップが機能しない場合に、何が生じるかを明らかにするプロジェクトを進めた。最初にSiglec-Hがミクログリア独自に発現する分子であり、マクロファージには発現しないことを証明し、次にSiglec-Hの遺伝子座にヒト型ジフテリアトキシン(DT)受容体(DTR)の遺伝子を挿入したノックインマウスを用いて、ミクログリアを除去することを試みた。Siglec-H-DTRマウスをDTで処理すると一過性にミクログリアは激減した。一方、脳常在性のマクロファージには影響がなかった。ここまでの成果は論文として発表した。このようなミクログリアの細胞死が促進された時に、ミクログリアを取り除きその後のミクログリアの増殖を制御しているメカニズムについて現在解析中である。また、細胞内のオルガネラのスクラップ&ビルドによる細胞内構造の再構成については、現在マイトファジーやオートファジー、エクソーム放出の観点から研究を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミクログリア除去の実験系はうまく立ち上がり、それを用いたin vivoの研究が可能になり現在進行中である。ミクログリアの残骸の処理機構の責任細胞を同定し、その分子メカニズムの解析を現在進めており、平成30年度中にはなんらかの結果が得られると考えられる。また、集束イオンビーム走査電子顕微鏡(FIB/SEM)を用いた、オルガネラスクラップに関する研究も現在進行中で、ミトコンドリアのスクラップ現象であるマイトファジーの3次元形態も同定した。大変興味深いことに、オートファゴゾームが閉じる領域にリソゾームが結合している像が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
ミクログリア除去に用いているノックインマウスのSiglec-H-DTRではDTRがミクログリアのみに発現し、脳や末梢のマクロファージには発現しないため、従来のIba1遺伝子やプロモーターを利用したミクログリア操作マウスよりはミクログリア特異性という点で優れている。これを用いることによりマクロファージとミクログリアの機能の違いやお互いの相互作用の研究に発展させることが可能になると考えられる。また、Siglec-H抗体はミクログリアを特異的認識できるので、従来のIba1抗体を用いた研究よりはミクログリアに正確に焦点を当てた研究が可能になる。このSiglec-Hの特性やDTRマウスを用いて研究を展開する予定である。また、オルガネラのスクラップやミトコンドリアのスクラップ&ビルドの現場を3次元的により詳細に捕らえる形態研究も推進する予定である。
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