研究実績の概要 |
認知機能・学習・情動などの高次脳機能に障害を呈する発達障害・精神疾患は、患者数の増大とともに、就学・就労困難など社会的機能の低下をもたらす重要疾患であるといえる。これらの疾患を理解し、治療法を模索することは社会経済的に非常に重要である。このような高次脳機能は神経細胞集団活動(=神経回路活動)が時空間的に適切に制御されることによって効率的に発現する。近年グリア細胞がその生理機能をもって、これらの神経回路活動の時空間的制御を担い、神経回路活動の恒常性を維持することが着目されている(Fields et al., 2014)。本研究ではオリゴデンドロサイト(OC)及びその前駆細胞(OPC)に着目し、そのスクラップアンドビルドが学習などの高次脳機能にどのように寄与するかを明らかにする。本年度は神経活動依存性の髄鞘化が阻害されることによって活動電位到達時間の時間的分散が増加し、これによって増加する神経細胞の自発的活動が学習行動を阻害する。さらにオプトジェネティックス法を用いて活動電位の到達時間の時間的分散を補正すると運動学習が改善することを示した(論文投稿中)。さらにこれらの神経活動依存的髄鞘化の機能基盤を検索するためにOCおよびOPC特異的にカルシウム感受性蛍光タンパク質が発現するマウスを用いて、現在OC,OPCの生体カルシウムイメージングを行い、その機能応答の解析を行っている。また髄鞘は脂質で構成されることから運動学習に伴う脂質成分の変化を質量分析顕微鏡で解析し、現在神経活動依存性を担う脂質構成成分の同定を行い、候補脂質を絞れている。
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