研究領域 | 脳構築における発生時計と場の連携 |
研究課題/領域番号 |
17H05765
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
川口 綾乃 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (90360528)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 神経発生 / 大脳発生 / 神経前駆細胞 / outer radial glia |
研究実績の概要 |
ヒトなど複雑な大脳組織構造を持つ生物種の脳原基には、脳室帯よりも外側の領域で未分化性を保ったまま分裂する神経幹細胞が存在しており、その分裂増殖が大量のニューロン供給に貢献している。これらの幹細胞は、脳室面で分裂する神経幹細胞aRG (apical radial glia) に対してoRG (outer radial glia)と呼ばれる。一方、oRGは、一部のaRGが脳室面に対し斜め・垂直な分裂をすることによって生み出されると考えられている。したがって、発生のある時期にみられる脳室面付近におけるaRGの分裂軸変化という「細胞レベルでの微小な変化」は、誕生するoRGがもたらす多数のニューロン産生を介して、最終的に形成される3次元的な脳組織構造に大きな影響を及ぼしている可能性が高い。本課題研究の目的は、発生の時間軸上の限られた期間でaRG細胞集団の中から斜め分裂を行うものが出現する分子機構と、それらがoRGの示す特徴的な細胞挙動にどのように関与しているのかを明らかとすることである。 本年度は、分化細胞の脳室面からの細胞離脱を制御する分子が、同時にaRGの分裂軸変化も制御している可能性について検討を行った。具体的には、マウス胎児脳組織への本分子の強制発現あるいはノックダウン・ノックアウトがaRGの分裂軸変化と生じるoRG様細胞に与える影響を、ライブイメージングならびに固定組織を用いて評価した。これらの研究から、発生のある時間枠内において捉えられる本分子のaRG細胞集団内での発現の揺らぎが、aRGの分裂軸変化とoRG産生に貢献していることを示唆する知見を得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ライブイメージングや固定組織での解析を機能実験と組み合わせることで、aRGの分裂軸変化に本分子がどのように関与するかを明らかにできた。特に連携研究者との共同研究によって、本分子のノックアウト時においてaRGの斜め分裂が減少することが明らかとなり、その結果、本分子の発現によってもたらされる斜め分裂が生理的な発生過程でも分裂軸の変動に関与していることが示唆された意義は大きい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究成果を取りまとめて国際学術誌に投稿した論文に対して、査読者から複数の追加実験の必要性を指摘されており、平成30年度はそれらに対応して論文のリバイズを行う。特に、oRGがマウスよりも多数存在することが知られているフェッレト胎児脳に対するin vivoノックアウト実験を連携研究者との共同研究として行う予定にしている。これらの実験を通して、aRGの分裂軸変化を惹起する分子機構がoRGの数と脳組織構造に及ぼす影響を評価する。
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