本研究では周期的なcAMP信号により発生時間が支配される社会性アメーバを材料に、パルス回数を絶対的な発生時間に変換する機構を解明する。特に、細胞がパルス信号情報のうち回数などのデジタル情報だけを利用しているのか、それとも量的に変化するパルスのアナログ情報を利用しているのか区別するため、cAMP パルス依存的に転写誘導される遺伝子群に注目しそのプロモーター解析を行った。社会性アメーバのcAMP 信号伝達過程では転写因子GtaCタンパク質やそのリン酸化が標的遺伝子の周期的な転写を制御する。ゲノムワイドなChip解析から、Zn Finger タンパク質であるGtaC はAGATnT をコンセンサス配列として結合すること、さらに各標的遺伝子にその数や配列の多様性があることが報告されている。そこで本研究では代表的なパルス応答性遺伝子として接着分子CsaA の転写調節領域を決定し、詳細な機能解析を行った。その結果、変異型を含むAGATnT 様配列を16 個もつ1.6kb の上流領域がCsaA 遺伝子の転写制御に必要十分であることを見出した。ここで、パルス応答性を最大化することを期待して、全てのGtaC 結合候補部位をコンセンサス配列に置換したところ、パルス応答性が顕著に低下するという意外な結果が得られた。様々な変異配列を用いた解析を行っており、GtaC の結合サイトへの変異やサイトの数が、濃度の異なるcAMP パルスを区別している可能性が示唆された。
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