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2017 年度 実績報告書

複雑脳形成における多様な幹細胞の特質の経時的変化の解析

公募研究

研究領域脳構築における発生時計と場の連携
研究課題/領域番号 17H05779
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

松崎 文雄  国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (10173824)

研究期間 (年度) 2017-04-01 – 2019-03-31
キーワード神経幹細胞 / 複雑脳 / 脳回 / フェッレット / 発生
研究実績の概要

複雑脳を形成するフェレットをモデルとして、神経幹細胞の時空間的な変化を追跡してきた。これまでの解析から、幹細胞帯が脳室帯と外脳室帯に別れた後も、基本的には、ニューロンを作り出す幹細胞identityの時間変化はほぼ同時に進行していることが判明した。しかし、神経層にまでニューロンが到達するのに要する時間が大きく違うため、同じ誕生日のニューロンでも、誕生した場所が脳室帯か外脳室帯(outer subventricular zone)かによって、異なる神経層に到達しているようである。この結果は、神経のidentityが誕生日だけで全て決まっているのではないという最近のいくつかの研究を支持する。
一方で、フェレットは誕生後も神経発生が生後10日ぐらいまで引き続くが、脳室帯と外脳室帯ではこの時点から大きくことなる事態が進行することも判明した。外脳室帯はそのまま神経産生を続け、グリア前駆体も生じてくるのに対して、脳室帯ではsox2+細胞(神経幹細胞)の核の往復運動や神経発生はほとんど停止する。そして、細胞の整列が進行し、数層のキューブ状(とりわけ細胞核)の細胞の列が形成される。これらの細胞は脳室面に太いendfootを伸ばしている。これらの多くの細胞がFoxj1陽性であり、その後、核が脳室面に移動し、主に脳室面を敷き詰めるependimal cell(Foxj1陽性)になることが判明した。また、ヒト脳の発生過程では、神経発生の後半、脳室帯にはradial gila (神経幹細胞)の長いファイバーが途中で切れたような形態をとるCryab遺伝子発現が陽性のtruncated radial gliaという細胞が出現することが知られている。Cryab陽性の細胞もこのレンガ壁状の構造に見出されるが、その数は少ないことが判明した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

複雑脳を形成するフェレットをモデルとして、神経幹細胞の時空間的な変化を追跡してきた。これまでの解析から、幹細胞帯が脳室帯と外脳室帯に別れた後も、基本的には、ニューロンを作り出す幹細胞identityの時間変化はほぼ同時に進行していることが判明した。
一方で、フェレットは誕生後も神経発生が生後10日ぐらいまで引き続くが、脳室帯と外脳室帯ではこの時点から大きくことなる事態が進行することも判明した。外脳室帯はそのまま神経産生を続け、グリア前駆体も生じてくるのに対して、脳室帯ではsox2+細胞(radial glia)の核の往復運動や神経発生はほとんど停止する。そして、細胞の整列が進行し、数層のキューブ状(とりわけ細胞核)の細胞の列が形成される。脳室面に太いendfootを伸ばしているこれらの細胞の多くがFoxj1陽性であり、その後、核が脳室面に移動し、主にependimal cell(Foxj1陽性)になることが判明した。また、Cryab陽性のtruncated radial glia様の細胞も存在するが数は少ないことがまでが判明したことから、新たな知見が得られた。

今後の研究の推進方策

本研究では、神経分化が脳室帯ではほぼ終了したところで、次に訪れるependymal cell (脳室の表面を形作る上皮細胞)とグリア細胞の前駆細胞の形成が共通の時空間的な履歴を経ることが判明したが、その前駆細胞群が層状の構築を取るという不思議なプロセスを経るといういう知見は、マウスでは見られないものであり、脳回を持つ哺乳類の脳に特徴的な現象である可能性が考えられる。この細胞ブロックの構築過程とその生理的意義を今後追求してゆく方針である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2018 2017

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 4件)

  • [雑誌論文] Cortical progenitor biology: key features mediating proliferation versus differentiation2018

    • 著者名/発表者名
      Uzquiano Ana、Gladwyn‐Ng Ivan、Nguyen Laurent、Reiner Orly、Gotz Magdalena、Matsuzaki Fumio、Francis Fiona
    • 雑誌名

      Journal of Neurochemistry

      巻: 146 ページ: 500~525

    • DOI

      10.1111/jnc.14338

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Loss of the canonical spindle orientation function in the Pins/LGN homolog AGS32017

    • 著者名/発表者名
      Saadaoui Mehdi、Konno Daijiro、Loulier Karine、Goiame Rosette、Jadhav Vaibhav、Mapelli Marina、Matsuzaki Fumio、Morin Xavier
    • 雑誌名

      EMBO reports

      巻: 18 ページ: 1509~1520

    • DOI

      10.15252/embr.201643048

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] The Asymmetric Cell Division Regulators Par3, Scribble and Pins/Gpsm2 Are Not Essential for Erythroid Development or Enucleation2017

    • 著者名/発表者名
      Wolwer Christina B.、Godde Nathan、Pase Luke B.、Elsum Imogen A.、Lim Krystle Y. B.、Sacirbegovic Faruk、Walkley Carl R.、Ellis Sarah、Ohno Shigeo、Matsuzaki Fumio、Russell Sarah M.、Humbert Patrick O.
    • 雑誌名

      PLOS ONE

      巻: 12 ページ: 0170295~0170295

    • DOI

      10.1371/journal.pone.0170295

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Systematic time-dependent visualization and quantitation of the neurogenic rate in brain organoids2017

    • 著者名/発表者名
      Kosodo Yoichi、Suetsugu Taeko、Kobayashi Tetsuya J.、Matsuzaki Fumio
    • 雑誌名

      Biochemical and Biophysical Research Communications

      巻: 483 ページ: 94~100

    • DOI

      10.1016/j.bbrc.2016.12.187

    • 査読あり
  • [学会発表] Revising the view of radial glia divison;regenerative plasticity ensures radial glia proliferation during the early mouse brain development2018

    • 著者名/発表者名
      松崎文雄
    • 学会等名
      第40回日本神経化学会大会
    • 招待講演
  • [学会発表] Regenerative plasticity of the epithelial structure in mouse radial glia during the early development2018

    • 著者名/発表者名
      Fumio Matsuzaki
    • 学会等名
      International Congress of Cell Biology
    • 国際学会
  • [学会発表] A novel concept for radial glia self-renewal and differentiation2018

    • 著者名/発表者名
      Fumio Matsuzaki
    • 学会等名
      Inetrnational Congress of Cell Biology
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] CORTICAL EXPANSION IN THE DEVELOPMENT OF COMPLEX AMMALIAN BRAINS2017

    • 著者名/発表者名
      Fumio Matsuzaki
    • 学会等名
      2017 ISN-ESN Meeting
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Regenerative plasticity of the epithelial structure in mammalian radial glia2017

    • 著者名/発表者名
      Fumio Matsuzaki
    • 学会等名
      Cortical Developmet Conference 2017
    • 国際学会 / 招待講演

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公開日: 2019-12-27  

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