研究領域 | 脳構築における発生時計と場の連携 |
研究課題/領域番号 |
17H05782
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研究機関 | 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター) |
研究代表者 |
高田 慎治 大学共同利用機関法人自然科学研究機構(新分野創成センター), 生命創成探究センター, 教授 (60206753)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 発生・分化 / シグナル伝達 / 遺伝子発現 |
研究実績の概要 |
本研究では、分子時計と細胞外シグナルであるFGFとの連携を軸に、体節分節形成において分子時計が停止する意義とそのしくみを明らかにすること、および咽頭嚢分節形成におけるFGFと分節形成の関係性を解析することを目的としている。 体節形成には転写抑制因子 Hairy を中心とする分子時計が重要であるが、その振動の維持や停止のしくみは不明である。研究代表者らは、ゼブラフィッシュを用いてTbx6およびその制御因子であるripply1とripply2が体節形成に重要な働きをしており、特に、ripply1とripply2が分子時計の停止に必要であることを示唆する結果を得ている。興味深いことに、ripply1とripply2の発現がFGFシグナルにより制御されることから、FGFが分子時計の維持・停止を制御しているのではないかと考え、その分子機構を解明することにした。本年度は、ゲノム編集により作成したripply1/ ripply2二重変異体を用いて、ripply1とripply2が分子時計の停止に実際に必要であることを遺伝学的方法により確認した。一方、FGFシグナルによるripplyの発現抑制機構については、FGFにより活性化されるシグナル伝達経路のうち、MAPKシグナル経路がripplyの発現制御に関与することを明らかにし、その制御機構の詳細を培養細胞を用いて明らかにした。さらに、ripplyによる分子時計の停止機構についても研究を進め、Hairy (her1)遺伝子の上流エンハンサーを用いて、Tbx6によるこのエンハンサーの活性化をripplyが直接抑制することを培養細胞を用いて示した。 一方、咽頭弓の分節形成におけるFGFシグナルを介した遺伝子ネットワークを検討するために、FGFシグナルの活性化がpax1の発現の時空間的関係性をゼブラフィッシュ胚を用いて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初に掲げた具体的目標について着実に成果が出ている。 特に、FGF・MAPKシグナルによるripplyの制御機構については大きな発見があり、これまでの先行研究ではわからなかったFGFと分節時計をつなぐ鍵分子の同定につながることが期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
分子時計の発現停止の意義を明らかにするため、Hairy(her1)の発現が体節細胞においても引き続き維持される胚を人為的に作成し、そのような胚では実際に分節形成に異常があることを示す実験を進めていく。 また、本年度に培養細胞を用いた実験により明らかになったFGF/MAPKシグナルによるripply遺伝子の制御が、胚体内でも同様に起きていることを示すために、FGF/MAPKシグナルのリン酸化部位に変異を導入し、胚体内における検証を進める。 咽頭弓におけるFGFの解析については、咽頭弓の分節機構が予想より複雑であることが判明したため、咽頭弓の分節過程を詳細に検討する実験を新たに加えることにする。
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