研究実績の概要 |
本邦において加水分解小麦を含む石鹸の使用後、小麦製品を経口摂取することによりアレルギーを発症した事例が発生し、患者数も数千人に達したことから社会的問題となった。申請者らは加水分解小麦による経皮感作小麦アレルギーの症例452例およびコントロールを用いて全ゲノム関連解析を行い、6番染色体短腕に存在するHLA-class II領域の遺伝子多型と疾患発症との間にゲノムワイド水準を満たす強い関連を検出した。本研究はHLA領域の詳細な解析をおこない、HLA領域の疾患感受性/抵抗性に関するマップを作製すること、さらには疾患発症に関与しうる抗原ペプチド領域を同定することを目的としている。平成29年度のゲノム解析として、加水分解小麦による小麦アレルギー患者のHLA class II領域の PCR-SSOP実タイピングデータと全ゲノム関連解析で使用した一塩基置換多型データを用いたインピュテーションデータ(SNP2HLAを使用して解析)との比較を行い、HLA-DRB1,HLA-DQA1,HLA-DQB1,HLA-DPB1の実タイピングとの高い一致率(>0.95)が得られた。さらにHLA領域のconditional analysisではHLA領域内に複数の関連する領域が検出された。 抗原ペプチド解析については、上記のゲノム関連解析により得られた結果に基づいて、疾患感受性HLA class II遺伝子型に適合するペプチドのスクリーニングを、固相化HLAタンパク質の定量法ならびにフローサイトメトリー法による定量解析により行い、予備実験の確立を行うことができた。
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