公募研究
我々は、制御性T細胞(Treg)による自己免疫寛容の確立・維持メカニズムを明らかにするために、ヒト自己免疫疾患IPEX症候群患者に見つかっているFoxp3変異を導入したマウスモデルを作製・解析してきた。その結果、機能欠失型変異であるI363V変異、R397W変異が皮膚、肺、肝臓など多臓器に1型および2型の炎症反応を惹起するのに対し、A384T変異は皮膚、肺などのバリア組織選択的に2型および3型の炎症反応を惹起することを見出した。そして、このA384T Foxp3変異体は転写因子BATFの発現を抑制することでエフェクター型Tregサブセットの分化と組織への集積を組織選択的に障害することを明らかにした (Immunity, 2017)。A384T変異型Tregの組織環境選択的、炎症環境選択的なエフェクター型Treg障害のメカニズムを明らかにするために、野生型およびA384T変異マウスの様々な組織からエフェクター型Tregおよびエフェクター型conventional T cells (Tconv)を単離し、digital RNA-seq解析を行った。主成分分析、階層的クラスタリング解析の結果、遺伝子発現は組織により最も大きく影響を受け、次にTreg vs. Tconvの違いに影響を受けることがわかった。変異による影響はそれらに比べればマイナーではあるが、野生型マウスと変異マウスとでは明確に異なる遺伝子発現を示すことがわかった。この変異のTregおよびTconvのT細胞受容体(TCR)レパトアに与える影響を解析するために、既に遺伝子再構成を受けたTCRbeta遺伝子を持ち片方のTCRalphaアレルのみ発現できる1D2b x TCRCa+/-マウスにA384T変異を導入した。予備的な表現型解析の結果、この背景においても皮膚と肺に炎症がみられた。
2: おおむね順調に進展している
本研究では、野生型およびA384T変異マウスにおいて様々な組織に局在するエフェクター型TregのTCRレパトアと遺伝子発現を解析することで、Tregによる組織選択的自己免疫寛容誘導・維持メカニズムを明らかにすることを目的としている。H29年度は、遺伝子発現解析については実験を終え、現在詳細なデータ解析を行っている。TCRレパトア解析については解析に必要なマウスモデルを作製し、このモデルが本研究目的に適した病態を示すことを、予備的な解析の段階ではあるが、確認している。以上の理由から、当初の計画通りに順調に研究が進んでいると考えている。
およびTconvにおいて組織選択的 and/or 変異依存的に発現が変動する遺伝子を同定する。TCRレパトア解析については、1D2b x TCRCa+/-背景の野生型およびA384T変異マウスについて表現型解析を行って、完全にポリクローナルなレパトアを発現する場合と同様の病態を示すことを確認する。そして、様々な組織からエフェクター型Treg、エフェクター型Tconvを単離し、そのレパトア解析を行う。組織選択的 and/or 変異依存的にに発現が変動するTCRクロノタイプが存在するのか明らかにし、それらについてレトロジェニックマウス作製用にTCRalpha cDNAのクローニングを行う。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 2件、 査読あり 6件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件)
J Immunol
巻: 200 ページ: 3291-3303
10.4049/jimmunol.1701222
Immunity
巻: 47 ページ: 268-283 e9
10.1016/j.immuni.2017.07.008
Nat Commun
巻: 8 ページ: 15067
10.1038/ncomms15067
Oncotarget
巻: 8 ページ: 35542-35557
10.18632/oncotarget.16221
巻: 199 ページ: 3516-3524
10.4049/jimmunol.1700248
EBioMedicine
巻: 25 ページ: 154-164
10.1016/j.ebiom.2017.10.009