研究領域 | ネオ・セルフの生成・機能・構造 |
研究課題/領域番号 |
17H05790
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
鍔田 武志 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (80197756)
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研究期間 (年度) |
2017-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 自己抗体 / SLE / Sm/RNP / 変性抗原 / 一細胞PCR / MHC / ネオセルフ |
研究実績の概要 |
代表的な自己免疫疾患の1つ全身性エリテマトーデス(SLE)では種々の核抗原への抗体が産生されるが、疾患発症にはSm/RNPなどのRNAを含む核抗原への自己抗体産生が重要である。Sm/RNPは複合体では安定であるが、ばらばらにすると速やかに変性することが知られている。そこで、変性Smタンパク質がネオセルフとして機能し、自己抗体産生に関わるかを明らかにすることを目的に解析を行なった。抗DNA抗体H鎖トランスジェニックマウス56RのナイーブB細胞の一部はVκ38CをIg L鎖として発現することでSm/RNPとりわけ変性Smタンパク質に反応した。CD72/FasL二重欠損56Rマウスは多量の自己抗体を産生し、SLE様の自己免疫疾患を発症した。CD72/Fas二重欠損56Rマウスのプラズマ細胞を単離し、一細胞PCR法で個々のプラズマ細胞の発現するIgH鎖およびIgL鎖遺伝子を単離したところ、一部の細胞でVκ38Cを産生していた。多くの場合、Vκ38Cには突然変異があり、一部の細胞では56R Ig H鎖のV領域にも突然変異があった。さらに、これらの細胞で発現する56R H鎖とVκ38Cを持つIg L鎖タンパク質を産生し、IgGを再構築すると、一部の細胞からのIgGはSm/RNPに強く反応し、一部の細胞からのIgGはSm/RNPにごく弱くしか反応しなかった。これらの結果から、Sm/RNPに反応するB細胞が抗体産生細胞に分化する際には、正と負の両方の選択を受けていることが明らかとなった。さらに、B細胞がSm/RNPを取り込むと、細胞内に取り込まれて変性したSm抗原がMHCII分子に会合して細胞表面に提示されることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
一細胞PCRにより個々のプラズマ細胞からIgH鎖およびIgL鎖を単離する実験系を確立し、実際にSLE自然発症マウスから1細胞レベルでSm/RNPに反応する自己抗体遺伝子を多数単離することができた。また、B細胞がSm抗原をMHCII分子に会合して状態で細胞表面に提示されることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究でSLE様自己免疫疾患自然発症マウスのプラズマ細胞から単離した、Sm/RNP自己抗原に反応することが想定される56R IgH鎖とVk38C Ig L鎖からなるIgG V領域の体細胞突然変異を修復することで胚型IgGを取得し、ナイーブB細胞が発現する胚型のIgGとプラズマ細胞が産生する体細胞突然変異を持ったIgGの非変性Sm/RNPおよび変性Sm/RNPへの反応性を解析することで、自己抗体産生の際の自己反応性B細胞の選択のメカニズムとその際の変性自己抗原の役割を明らかにする。
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