公募研究
本申請は、肝内胆管がん患者の腫瘍浸潤T細胞の中の、ネオアンチゲン特異的CTLのクローンの頻度を測定することを目的としていた。2年間の計画としては、1)肝内胆管がん患者の腫瘍浸潤T細胞を採取する、2)胆管がん組織からスフェロイド培養組織(CTOS法)を作製する、3)腫瘍浸潤T細胞からTCRのクローニングを複数個行う、4)TCRを3T3細胞に導入する、5)TCR導入3T3細胞とスフェロイド培養腫瘍細胞を共培養して反応するかどうかを測定する、6)一方スフェロイド培養細胞をエクソームシークエンスし、ネオアンチゲンの候補となるペプチドの候補をあげ、合成する、7)がん細胞に反応できるTCRのうちネオアンチゲンに反応するTCRの頻度を測定する、としていた。このうち29年度は1)―3)を行う計画であった。しかし、肝内胆管がん患者の腫瘍浸潤T細胞を採取はした2例では、がん組織のスフェロイド培養に成功しなかったため、腫瘍浸潤T細胞については凍結保存はするにとどめた。一方、富山大学の岸裕幸先生から頂いた3T3ベースのレポーター細胞は、生細胞に対するTCRの反応性を見るには適してないことが実験を通じて判明し、計画を変更することになった。以上のように必ずしも計画通りには進まなかったが、我々の研究の目的はネオアンチゲンを標的とした治療法の妥当性の検証であり、そのような治療法のためのプラットフォーム技術の開発は本年度さらに進歩している。従って、全体的な計画の方向性自体には変更はない。
3: やや遅れている
本年度は、実際に肝内胆管がん患者の腫瘍浸潤T細胞を採取したが、2例にとどまった。また、この2例については、がん組織のスフェロイド培養を試みたがうまく行かなかったため、採取した腫瘍浸潤T細胞については、凍結保存はするにとどめた。一方、富山大学の岸裕幸先生からCD3分子を導入したレポーター3T3細胞を受け、これを用いてクローニングしたTCRの機能を測定するという計画についても、見直しの必要が生じた。実際に3T3細胞に既知の抗原特異性を持つTCRを導入してペプチドを負荷した抗原提示細胞によってTCRシグナルを検出したところ、相当な高濃度でないと反応が検出できないことが判明した。すなわち、生細胞を標的とした時のTCRの反応性を見るには適してないことがそのような実験を通じて判明し、計画を変更せざるを得なくなった。以上のように計画通りには進まなかった点はあるが、我々の研究の出口はネオアンチゲンを標的とした治療法の妥当性の検証であり、ネオアンチゲンを標的とした治療を行う上で必要になるプラットフォーム技術の開発自体は、29年度にもよく進歩している。例えば、iPS細胞ストックにTCR遺伝子を導入して作製したTCR-iPS細胞から高品質なTCRを誘導することに成功している。
肝内胆管がんよりも大腸がんの方がスフェロイド培養が容易とされている。次年度は別ながん(大腸がん)を標的にしてスフェロイド作製を作製する予定である。京大病院の消化管内科から検体の供与を受ける予定である。患者検体から腫瘍浸潤T細胞を単離し、そのT細胞からTCRのクローニングを行う。TCRの機能は末梢成熟CD8T細胞か、あるいはiPS細胞から再生したCD8T細胞を用いて研究を進める予定である。
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